芭蕉と蔵屋敷あづまさの雛飾り〜七ヶ宿の古民家の積雪

05/05/27

ココログ3月号です。

「芭蕉と蔵屋敷あづまさの雛飾り」など、早春の様子をお楽しみください。



2005.03.04

芭蕉と蔵屋敷あづまさの雛飾り

おはようございます。土屋です。

昨日は3月3日の雛祭りでした。

月日は移り行くもので早いものですね。


雛祭りといえば、私にとっては芭蕉です。

平成17年2月11日撮影 隅田川の万年橋より、読売新聞社を眺めると
遠くの向こう岸には芭蕉が鎮座しています。

この画像のどこに芭蕉がいると思いますか?



芭蕉翁です。

私の敬愛する芭蕉は、元禄時代に隣には
紀伊国屋文左衛門が立派な豪邸(庭)を建築していたというのに、
ここ深川の地でひっそりと隠居していました。

「奥の細道」に出発する前には、曽良など門人たちもよく訪れていました。


奥の細道の有名な序文があります。

「月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也。

舟の上に生涯をうかべ、馬の口とらえて老をむかふる物は、日々旅にして旅を栖とす。

古人も多く旅に死せるあり。予もいづれの年よりか、片雲の風にさそはれて、
漂泊の思ひやまず、海浜にさすらへ、去年の秋江上の破屋に蜘の古巣をはらひて、
やゝ年も暮、春立る霞の空に白川の関こえんと、そゞろ神の物につきて心をくるはせ、
道祖神のまねきにあひて、取もの手につかず。

もゝ引の破をつゞり、笠の緒付かえて、三里に灸すゆるより、松島の月先心にかゝりて、
住る方は人に譲り、杉風が別墅に移るに、

草の戸も住替る代ぞひなの家

面八句を庵の柱に懸置。」


現代語訳を紹介させて頂きましょう。


「月日というのは、永遠に旅を続ける旅人のようなものであり、来ては去り、
去っては来る年もまた同じように旅人である。

船頭として船の上に生涯を浮かべ、
馬子として馬の轡(くつわ)を引いて老いを迎える者は、
毎日旅をして旅を住処(すみか)としているようなものである。

古人の中には、旅の途中で命を無くした人が多くいる。

私もいくつになった頃からか、ちぎれ雲が風に身をまかせ漂っているのを見ると、
漂泊の思いを止めることができず海ぎわの地をさすらい、
去年の秋は、隅田川のほとりのあばら屋に帰ってクモの古巣を払い、
しばらく落ち着いていたが、しだいに年も暮れて、春になり、
霞がかる空をながめながら、
ふと白河の関を越えてみようかなどと思うと、
さっそく「そぞろ神」がのりうつって心を乱し、おまけに道祖神の手招きにあっては、
取るものも手につかない有様である。

そうしたわけで、ももひきの破れをつくろい、笠の緒を付けかえ、
三里のつぼに灸をすえて旅支度をはじめると、さっそくながら、
松島の名月がまず気にかかって、住まいの方は人に譲り、
旅立つまで杉風の別宅に移ることにして、その折に、

「人の世の移ろいにならい、草葺きのこの家も、新たな住人を迎えることになる。
これまで縁のないことではあったが、節句の頃には、
にぎやかに雛をかざる光景がこの家にも見られるのであろう。」

と発句を詠んで、面八句を庵の柱にかけておいた」


おくのほそ道文学館」さまより、引用させて頂きました。
ありがとうございました。

実は、東京駅からこの芭蕉記念館まで徒歩で行きました。。

大体1時間くらい歩きまして、帰りにタクシーに乗ったのですが、
運転手さんに笑われてしまいました。

その運転手さんも偶然ですが、芭蕉が好きで、
栃木の黒羽とか、私のお膝元の山寺などに
埼玉の自宅から下道でドライブして楽しんでいるとのことでした。

村山の蕎麦街道にも行って山形蕎麦を堪能していらしいですので、
私のほうからも「大石田の「なんば」と「きよ」も絶品ですよ」と伝えておきました。


芭蕉記念館には、「草の戸も住替る代ぞひなの家」の石碑があります。

感動です。

芭蕉ファンにとっては感涙物です。

クローズアップしましょう。

私流、土屋幸太郎風の訳。

「私の住んでいるこのボロボロで殺風景で、まるで女っ気も子供がいる騒がしさもないヒッソリとした家をもうすぐ空けよう。松島などの名勝地の歌枕を一度見てみたい。たとえ死んだとしても、それが本望だ。さて、この家には、次の入居者が決まっているらしい。その人は、家族があり、女の子もいるそうだ。来年の私のいないこの家にも、雛祭りで桃の節句はさぞ賑やかになるであろう。私は、かならず北を目指すぞ」

という訳で、山形から上京しても芭蕉にうっとりとしていたのでした。。


さて、雛祭りといえば、私が喜多方に行ったときに撮影していた画像がありますので、
紹介させてください。

モーツアルトのジュピターなどを聴かせがら、
おいしいお酒をつくる小原酒造の道路をはさんで斜め前にある
「蔵屋敷あづまさ」です。

となりには、会津うるし美術館があります。

ああ、なんて素敵な店内でしょう。

東京や大阪などの首都圏のお客様は、ぜひここを訪れてみてください。

素晴らしいです。(料理もおいしい)


会津地方では、新春を祝い、「商売繁盛」を祈願して
「玉飾り」を店内に飾ります。

そうそう、忘れていました平成17年1月16日撮影です。


この日は、物凄い大雪でした。

奥羽本線は雪のため、3時間くらい不通になり、
東北道も雪で閉鎖となりました。

あづまささんでは、予定した観光客が田島にもバスが到着していないとのことで
困っていたようでした。


蔵屋敷あづまささんの店内には、ちょうど雛人形が飾ってありました。

喜多方の旧家で食事をできる喜びと
雪に閉ざされた生活の中でも、
店内には玉飾りや雛飾りなど、
ほんのりと春を喜ぶ気持ちが感じられ
心が温かくなりました。

芭蕉もこのような景色を想像して、遠い旅路に出発したのでしょうか?





2005.03.08

朱鷺草

朱鷺草が満開になっています。

昨年はダンボール箱に入れているうちに、
花が開いてしまって失敗してしまったそうです。

今年はそうならいないように気をつけて
早めに店に飾ったと母が言っておりました。

3月2日の「「肝と腎を養って、目の疲れや老化を防止」をアップしました。」でも、
朱鷺草を紹介していますが、今日はそれも含めて5つの鉢の朱鷺草が私たちの目を楽しませてくれます。

昨日から春の陽気が漂いだし、
春雨が降る一日に朱鷺草が咲いています。





2005.03.10

七ヶ宿の古民家の積雪

平成17年3月6日撮影です。

山形県と宮城県を結ぶ街道113号線沿いにある七ヶ宿の蕎麦屋「吉野家」さんです。

さすがに宮城県であっても、奥羽山脈の麓ですので雪が多いところです。

藁葺き屋根の古民家を改造した蕎麦屋さんで、
天婦羅もおいしく、蕎麦もなかなかのお味でした。

ブーちゃんという猫もストーブの前で寝ていて、
お店に行ったというよりは、親戚の家に遊びに行った感じで良かったなあ。。


さて、吉野家さんで蕎麦を食べていると、
道路を挟んで店の前にある安藤さんの家の屋根の雪が凄いので
「写真を撮ろう」とお店のおばちゃんたちが言っています。

店の外に出たと思ったら、使い捨てカメラを持ってきて、
客である私に使い方を聞いてきます。

そんな訳で帰り際に、
お店の人たちも安藤さんの歴史のある家を使い捨てカメラで撮影していたので、
私も一緒にデジカメで撮影してきました。

どうでしょうか。。

安藤さんの家は、今年の冬は1回も雪を降ろしていないのだそうです。

雪で崩れそうですが、さすがに昔の家は積雪に強いのでしょうね。

見事に支えきっています。

なんでも吉野家さんたちが言うには、今はおばあさんが一人で住んでいるとのこと。

おばあさんは、古い家で住むのに不便でないかな、
雪下ろしなどは地域の人たちがやってくれないのかな、
主が居なくなったらこの貴重な古民家はどうなるんだろう、などと色々と思いました。

雪国に住んでいる私にとっては、
藁葺き屋根の積雪は人事ではなく、
おばあちゃんへの重圧にも感じました。





2005.03.26

ABC戦争と若木山の雪化粧

こんばんわ。土屋です。

彼岸を過ぎたばかりと言うのに、
昨日、本日と山形では春の雪が降っています。

春の雪と言っても、「淡雪」ではなく、本格的な荒れ模様の「冬将軍」クラスです。

つい数日前までは、庭の土を見ながら、
もう少しで福寿草と今年も会えるんだなあと思っていたのですが、
この調子ではまだのようです。

(漢方コラム「福寿草」もよろしければご覧になってくださいね)


とき:2003年3月24日12時56分撮影の福寿草です。漢方コラムより。


さて、本日の夕方に一瞬だけ陽光が射しましたので、
我が家の3階から撮影した若木山をご紹介しましょう。


だいぶ雪は溶けましたが、ところどころ日当たりが悪いところは残雪となっています。

右手に見えるのは神町小学校で我が母校。

前方に見える山は、最近芥川賞でますます有名になった─
私の同級生の阿部和重氏の作品にもしばし登場する若木山(おさなぎやま)です。

ああ、私は「ABC戦争」を思わず買ってしまったのですが、
まだ数ページしか読んでいません。

でも、書いている内容が私たちのことなんで、なんだか嬉しいんです。。

同級生の特権ですね。。

山形県は、Yで、村山市がM。東根市はH。天童市はTで記号が踊る小説です。

高校時代に奥羽本線神町駅から、山形市まで汽車通学
(電車通学のこと─当時は「汽車通」と言っていた)をしていた私にとっては感涙物です。


あ、もちろん新潮社のこの「ABC戦争」の他の短編にも若木山が出てきますよ。


さてさて、ズームアップしてみましょう。

若木山がうっすらと雪化粧をしています。

なんだか「白い髭」を伸ばしているようにも見えます。


春はもう少しですが、まだ冬将軍が帰らない
今日この頃の山形を紹介させて頂きました。

若木山は、スタイルがいいんですよ。




2005.03.31

福寿草


2005年3月31日9時49分撮影 場所:土屋家の庭 

我が家の庭でも、福寿草が咲きました。

1週間前に福島県の県南で福寿草が咲いているのを見かけて、
一足早い春の訪れを実感していたのですが、
自分の家でも福寿草が咲いていることは嬉しいことです。

母が言うには、数日前に雪囲いを外したので、
お日様の陽射しが地面に当たるようになったので、
福寿草も咲き出したのだろうとのことでした。


土屋薬局 中国漢方通信」の漢方コラム「福寿草」で、
過去に福寿草についての説明を載せています。


「福寿草」

キンポウゲ科 福寿草、賀正蘭、側金盞花、雪蓮


フクジュソウは、その名の通り新春を迎える祝いの花として飾られる。

日本の園芸書として最古の「花壇綱目」(1681年)にも、
「福寿草、花黄色、小輪也,正月より花咲。元旦草、朔日草(ツイタチクサ)とも、
福つく草とも俗に言」と記載されている。

ただし、正月に飾られる花は室(むろ)での促成栽培で、
各地生地で咲くのは 早春の頃となる。

この花は向日性で、陽を追って朝から夕方まで40度も首をふる。

自生地としては、南は阿蘇、五家荘、祖母山のような深山にみられるが 数は少ない。

北にいくにしたがって標高は低くなり、数も増えてくる。

北海道では平原に自生する。

フクジュソウには全草、特に根や根茎に
シマリンをはじめとするジギタリスの強心配糖体によく似た成分が含まれている。

誤用による事故の危険性があるので民間、家庭では使用してはならない。

「四季を彩る薬草の花 美寿実出版部編」より。


……


「フクジュソウ(キンボウゲ科)」


全草有毒。

特に、根、根茎に強心配糖体のシマリンを多く含む。

日本のほか、朝鮮、中国、シベリアに分布し、山地の陰地に野生する多年草。

花径3cm、黄金色の花は日中開き、夕刻からつぼむ習性がある。

ヨーロッパにも、これに似た西洋フクジュソウがある。

正月にフクジュソウを飾るのは、病魔よけだけではなく、
黄金色の花を黄金(こがね)に見立てて、それにあやかり、
ことしもお金にあやかたりという 気持ちを含めて飾るのが多い。

正月用に盆栽として出回るのは、促成栽培されたもの。

野生のものは、2〜3月ごろに開花する。

強心薬と早合点して、根茎をせんじて飲めば、心臓マヒを起こして死ぬ。


「薬草カラー図鑑」 主婦の友社 井沢一男著より


黄金色に輝くその花は、新春の訪れを祝うとともに、
時おり雪が降ったり、風雨にさらされたりと春の天候の不安定さに、
その蕾を閉じてじっと身を守ります。

お日様が輝くときだけ、咲き誇るその姿に春を感じ、
今年も新たな季節に入ったことを教えられます。





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