カリン

01/01/24



2000年11月16日撮影 場所 土屋薬局 撮影者 土屋幸太郎



昨年 11月に 処方箋を持ってくるお客様に カリンを頂きました。

そこの家は、私が子供の頃は 坂店(さかみせ)という名前で みんなの人気でした。

駄菓子屋さんです。

学校のすぐ近くにあるので、学校帰りは いつも 坂店(さかみせ)に寄ります。



小遣いで、買えるもの。

パレードというジュースがありました。

これは、50円。 たまに、当たりが出るのが嬉しい。

ホームランバーというアイスクリーム。

30円です。 これも たまに当たります。

三色トリノ。 これは 三色になっていて 白色はバニラ、黄色はバナナ、茶色はチョコレート味という優れもの。

地元の会社 フタバアイスクリームが作っているんだ。

よっちゃんイカ。 20円です。噛めば噛むほど、味がでます。



私が 好きだったのは、コインゲームです。

10円を入れると、「ピ ピ ピ ピ」となり、まるーい円盤を白い光が回転します。

賭けるところは、「2、4、6、8、10」とあります。

通常は、「2」に賭けると まず間違いないです。

「2」に多めに賭けて、「4」はちょっと、押さえで「6」とか「8」に賭けます。



子供ながら、賭け方にも 性格が出てきて、「堅実型」 「一発大物狙い型」 など
個性ある 遊びでした。

たまーに、「2」とか、「4」とか、みんなで 全部の数字を押さえて張っていると、
数字が 「0」のところに 止まったりして 悲しい思いもしたものでした。


そうだ。。

思い出しました。

なんで あんなに燃えたか。

10円を入れてコインゲームをしますが、その 坂店(さかみせ)では、
当たったコインで お買い物が出来たのです。

3枚で ホームランバー。 2枚で よっちゃんイカ。 絶対、面白いですよね。


坂店では、私が小学生の5年生くらいからは、あの名作ゲーム 「バルーンボンバー」とか
「ブッロク崩し」 「パックマン」などが 登場してきて、みんなで 「ゲームセンター嵐」の
「炎のコマ」をやっていたものです。


その懐かしい 坂店も 今はお店を止めてしまったのですが、
コンビニしか知らない子供には 負けない自身があります。


「こらー、何やってんだー」

「はいよ、両替か」

「早く 家さ、帰れよー」

などと、いう言葉を コンビニでは掛けられないでしょ。





さて、このカリンは、とっても 芳香感があるのです。

このテーブルに置いていると、店内中に 香りが広がります。

正直言って、私も この甘く漂う カリンの香りには 驚きました。

このような カリンは売ってないですよ。

このゴツゴツした肌触り。 匂い。 





ちなみに、ここに宣言しますが、
これは 間違っても 「マルメロ」では ありません。


今回、この「カリン」という コラムを書くにあたって、
「薬草カラー図鑑」(井沢一男著 主婦の友社) と、
我ら 日本中医薬研究会が誇る 貝津好孝先生が全精力をかけて執筆した
「日本の薬草」(貝津好孝 著 菅原光二 写真 小学館) を研究しました。


ビクッとしたのが、「カリン」と 「マルメロ」は 似ているのです。

一瞬、この画像を見ながら、これは 「マルメロ」では、、と考えてしまいました。


「薬草カラー図鑑」 では、 「マルメロ」のところで、
類似植物カリン と記載されています。





続 薬草カラー図鑑 17ページ 「マルメロ」 から引用しましょう(井沢先生、ありがとうございます)


類似植物カリン

マルメロは 長野県の諏訪湖周辺に多く栽培されているが、
このあたりでは これをカリンと呼んでおり、
砂糖漬けなどを カリンの砂糖加工品と銘打って販売しているが、内容は マルメロのようである。


そのページ内では、幹や葉、花、果実の違いを述べていますが、
この 「カリン」は お客様に頂いたものですから、
幹や葉、花などで識別するわけには いきませんので、
果実の違いで 「カリン」「マルメロ」を 鑑別していきましょう。


マルメロ…果実は 外面に綿毛がある。

カリン …外面は無毛。





読者のみなさま、よーく見てください。

この上の画像は、解像度を落として 16Kbにしていますから、
ちょっと 荒いですが、この 「カリン」には 毛はありません。


検証第2弾。

薬草カラー図鑑より。 197ページの 「カリン」より。


類似植物

あるとき土産品店で 「かりんの砂糖漬け」を売るかたわらに、
果実を積んで、
これを加工したものと説明してあったが、
これはカリンではなく、
よく似た マルメロであった。

名物「かりんの砂糖漬け」は、
土地の人さえ まちがえるほど似ているということである。

カリンは 西洋梨形。

マルメロは ほぼ球形で、
表面には ビロードのような毛がある。

毛がなくて、つるつるのがカリンで、
材質はかたく、粘りがあって美しいので 家具類が作られる。





ん???? ひょっとしたら、この画像は 「マルメロ」かもしれない。。

なんだか、「マルメロ」の写真に似ているんですよね。。

「カリン」は 西洋梨形で、「マルメロ」は ほぼ球形という ところが引っ掛かります。





では、最後に 私の大先輩であり、師匠の 貝津先生の力作
 「日本の薬草」に登場してもらいましょう。(貝津先生、いつもお世話になっています)



マルメロ 


バラ科。ペルシャ、トルキスタンの原産で、日本でも栽培される落葉高木。
しばしば カリンと間違えられる。

薬用部位

果実。 秋に熟した果実をとり、輪切りにして天日乾燥する。

薬効

食べ過ぎ。

使用方法

1日5gを 600ccの水に入れ、30分ほど煎じて 3回に分けて服用する。

いわゆる消化薬で、食べ過ぎて嘔吐や すっぱい水が上がってくるような状態によい。

果実は マーマレードの原料として かん詰めにされる。



カリン


バラ科。中国原産の落葉高木で、おもに栽培される。

薬用部位

果実(土木瓜(どっもっか)、和木瓜)。木瓜はボケの果実。

日本では カリンをボケと称して売られている場合がある。

カリンは 洋梨形で つるつるしているが、マルメロは 球形で 表面上にビロード状の毛がある。

カリンの苗木を買って 実がなったら マルメロだったということがよくある。

薬効

咳、吐き気、すっぱい水がでる。

使用方法

1日3〜5gを 400ccの水に入れ、30分ほど煎じて 3回に分けて服用する。

また、生のカリンを輪切りにしてハチミツに漬け、
1日2〜3回 小さじ1杯のハチミツをお湯に溶いて飲む。

咳では、よく 痰がからむようなときによい。

体質をあまり問わない。

香りがいいので 車の芳香剤として 丸ごと入れておく人がいる。




「香りがいいので 車の芳香剤として 丸ごと入れておく人がいる。」

もう一度、繰り返しましょう。

「香りがいいので 車の芳香剤として 丸ごと入れておく人がいる。」





この「カリン」は、本当に とても よい香りを漂わせていました。

柑橘系の 甘い 爽やかな 香り。


人間には、五感があります。

「視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚」

まれに、第六感(シックスセンス)もありますが、
これらの感覚で 私たちは生きています。


私が愛するお店は、
山形から、仙台や塩釜に仕入れに行き、
新鮮なものを 親方が「こころ」をこめて 料理をつくってくれます。

旬のものを おいしく調理したものを食べるのは
この世の幸せです。


自分が味わったものは、
自分にしかない 「味覚」として、記憶に留まります。

これは、どんな表現を使っても、
周りの人には 伝わりません。



言葉では、表現できない。



だけども、素晴らしい思い出になります。



食べるのは 一期一会。



人と触れ合うのは 「触覚」


亡くなった人の思いでも
永遠に残っていくことでしょう。


「カリン」の香りも そうです。

この香りは 再現できません。

私や その場に居た人たちだけが知っている 思い出。


「嗅覚」も こころに残り、記憶となります。


いくら、インターネットだ!
情報技術革命だ!

と言っても、違うと思うのです。


今の技術では 再現できるのは
「視覚」 「聴覚」
だけです。


「味覚」 「触覚」 「嗅覚」は、
それぞれ 一人一人の思い出となって
こころに沈殿していくのです。


画像で見ると、「マルメロ」かもしれない。


でも、香りは 「カリン」なのです。