“痛み、しびれ”を楽にしよう!…第8話


「私の漢方弁証論治」 中成薬新報・夏号より
 独歩顆粒について 膝痛、顔面神経麻痺(ベル麻痺)、膝の水たまり、リウマチ、口唇ヘルペス


日本中医薬研究会広報委員・南東北中医薬研究会 土屋薬局 薬剤師 土屋幸太郎






独歩顆粒は唐代の医書「千金要方」に記載されている独活寄生湯(どっかつきせいとう)を製剤化したものです。

気血(きけつ)や肝腎(かんじん)を補い、体の正気を高めると同時に、風寒湿邪を追い払い、気血や経絡のめぐりを活発にする独歩顆粒は、まさに「名方」「名宝」にふさわしいです。


16種類の自然の生薬が、緻密な世界を築き上げ、扶正去邪、補虚止痛の代表的な処方となります。


独歩顆粒を中心に弁証を行っていけば、お客様、患者様のQOL「生活の質」を高めることができることでしょう。

「人は足腰から衰える」と言われます。

高齢化社会にイスクラ産業の豊富な補腎薬とともに、応用範囲は広いといえます。





◎お客様体験談 その1 1年間の右膝の痛み




68歳、女性、農協共選場勤務  


3・12来店


・主 訴: 1年間の右膝の痛み

・現病歴: 右膝が痛くて、うまく曲げられない。

椅子に座っている状態でも、右膝を上げると、かなり痛い。


・弁 証: 肝腎不足、風寒湿痺

・治 方: 補益肝腎、風散寒除湿、宣痺止痛

・ 処 方: 独歩顆粒


3.28: 午前中に来店してきて、おじぎをして礼を言ってきた。
 聞くと昨日、お店で、試しに服用した独歩顆粒で、右膝の痛みが取れた。
 今迄曲げにくかったのも、スムーズに曲げられるようになった。


4.26: 右膝が曲げやすくなり、痛みはない。
 耳鳴りがあったが、耳の聞こえも良くなった。お友達も独歩顆粒を服用して、
 2、3日で膝の痛みが楽になってきた。

・ 処 方: 独歩顆粒


11.9: 独歩顆粒を服用してから、お医者さんの痛み止めの薬を、もう5ヶ月間服用していない。

お店で独歩顆粒を服用した時の夜から、膝を真っ直ぐに伸ばして眠れるようになった。

それまでは、夜も痛くて、膝を真っ直ぐに伸ばすことができなかった。


考 察: 


@痺証などの痛みを治す時には、その人の生活環境をみる必要がある。


この女性の場合は、農協のリンゴやサクランボなどの果物を、共同して出荷する所に勤務している。

暖房、冷房はなく、吹きざらしの建物で働いているので、非常に風寒湿の邪気が厳しい。

独活製剤は、天気、天候(外因六邪)から痛みが発生している場合の、ファーストチョイスとなる。



A腎は髄を生じ、骨を主り、腰は腎の府とよばれる。


肝は筋を主に、膝に関連する。

牛膝は血脈を利し、血を膝に集め、膝の回りの筋(靭帯)を丈夫にする。

従って桑寄生、杜仲、牛膝の入った独歩丸は、膝の痛みに有効である。





◎お客様体験談その2  顔面神経麻痺(ベル麻痺)



57歳、女性、以前は農家に畑仕事の手伝い

  
7.10来店


・主  訴: 2.17からの顔面神経麻痺(ベル麻痺)

・現病歴: 1月末頃にお腹が痛くなって、吐き気がした。

開業医で風邪と診断されて、風邪薬を服用した。

一週間したらお腹の調子が抑まった。

次に風邪の軽い症状が出た。

それから2週間たった2月17日に、突発的に顔面神経痛がきた。

夜8時頃に左顔が突っ張ってきて、瞼が落ちてこなくなった。

A病院に行って薬をもらったが、適切な治療をしてもらえなかった。

現在、開業医の神経科の薬と、針治療をおこなっている。

顔面の左半分が頬を引っ張られる感じ。

風にあたると、神経麻痺がつらい。

腰痛、膝の痛みはない。

食欲正常。二便正常。


舌質: 紅 
舌苔: 奥に白膩苔をみとめる

・弁  証: 風寒痺阻経絡、正気不守

・治  方: 去風散寒除湿、養血活血通絡、扶正固本

・処  方: 独歩顆粒15日分
       冠元顆粒 2包/2  15日分


7.27: 特に変化なし

・処 方: 同上


9. 3: 

B大学病院の検査の結果、顔面に電気を流す検査で右側が100だとすると、左側は80%まで回復した。

2ヶ月ごとに検査している。


舌 質: 紅
舌 苔: 奥に白膩苔をみとめる

・ 処 方: 独歩顆粒  15日分
       湿気を払い勝つ漢方薬 2包/2  15日分


10.3: 左側の顔の目の下のところから、突張っている感じがする。

顔面神経麻痺になる前に、起床時の両手の指の痺れ感があった。
こするとすぐに治っていた。

今は両手の指の痺れはなくなった。

今回B大の検査の結果85%まで回復した。

舌 質: 紅
舌 苔: 奥に白膩苔

 ・処 方: 同じ漢方薬


10.25: 90%まで回復した。神経はだいぶ戻っている。

舌 質: 紅
舌 苔: 奥に軽い白膩

 ・ 処 方: 独歩顆粒    30日分


12.12: 

舌 質: 紅
舌 苔: 奥の白膩が取れて無苔

 ・ 処 方: 独歩顆粒  30日分

見ためには、顔面神経痛とは、分からないようになった。

本人にはあまり気にしないように指示。


・ 考 察: 


@顔面神経麻痺の根本は正気不足(気血陰陽不足)であり、経絡が空虚になっている状態がある。


また、衛気が弱いために(衛気不固)、風寒の外邪の侵入を許しやすい。

風邪は「百病の長」「六淫の首」なので他邪と結びついて身体の上半身を犯しやすい。

この症例の場合は、本虚標実である。

また、長期に渡って治癒しない場合は、本来の体質より生じている痰濁と風が結びついて風痰となっているか、経絡中に淤血が発生して、気血が不通になる病態が考えられる。



A独活製剤は気血陰陽の不足を補い正気を固める。


また脾腎を補い衛気の産生を活発にし、新風を防ぐ。

また経絡を犯している風寒湿の邪気を払うことにより、旧風を去り、気血の流れを改善する。

独活製剤の処方中の四物湯は、養血活血となり、経絡を滋潤し、風寒の邪気がよりつかないようにする。

これは「風を治すには、血を埋める」の方意となる。 
 

B本症例では最初養血活血を中心に方剤を組んだが、期待した効果が現われなかったので、経絡を阻害していると思われる痰湿(風痰)の邪気を払うことに目標をおいて、満足のいく結果となった。





◎ お客様体験談その3 膝痛、膝の水たまりと便秘症



62歳、女性、無職  


4.17来店

・主  訴: 膝が痛くなりやすい体質で、おとといから痛んできた。

・現病歴: お風呂に入って温まると楽になる。
寒いと調子が悪く、雨が降っても具合が悪くなる。

・既往歴: 特になし

・弁  証: 風寒湿痺、肝腎不足

・治  方: 去風除湿散寒、補益肝腎

・処  方: 独歩顆粒  30日分


5.18  

まあまあ痛みは楽になった。

山にも行けるようになった。

・処  方: 独歩顆粒 30日分


6.10  

膝の痛みは楽になってきている。

以前は、よく膝に水たまりできた。

今は全然膝に水がたまらない。 

独歩顆粒を服用したら、便秘が治った。

最近は毎日、排便がある。

若い時から便秘症があった。

ご主人は、坐骨神経痛で一緒に服用している。

天気が悪くなると、痛みがつらくなる。

 ・ 処  方: 独歩顆粒


6.25  

調子良い。

 ・ 処  方: 独歩顆粒


7.12  

膝の関節痛、脚の痺れがなくなった。

ただ、疲れてくると痺れる。

 ・ 処  方: 独歩顆粒


7.30  

服用していると調子が良い。

頑固な便秘が改善した。

今までどんな通じ薬を飲んでも効果がなかったが、独歩顆粒を服用してから1日1回きちんと排便するようになった

今回から1回9丸から6丸に減らす。

以下、継続服用している。


考察: 

@独歩顆粒は去風勝湿の代表方剤で、独歩顆粒単独で俗に言う、「膝の水たまり」(老化で膝関節の軟骨がすり減り、膝関節に炎症が起こり、
関節症の分泌が増える状態)に奏効します。


もし、独歩顆粒単独で効き目が現れない場合には、防已、白朮、黄耆の入っている防已黄耆湯を併用すると良いと思われます。


A独活製剤を服用して、便秘が治っている方がたくさんいます。

私見ですが以下、述べたいと思います。


A 市販の下剤、医家向けの薬にしても、大黄、アロエ、センナなどの熱結便秘の薬ばかりなので、虚弱者の便秘には適応しない。


B 独歩顆粒は気血陰陽を補うので、それぞれ気虚、陽虚、血虚、陰虚、便秘に適応する。 


C 肺と大腸は表裏関係にある。
肺気不宣の状態だと、大腸の気が停滞するので、気滞便秘がおこる。

独歩顆粒は、この肺気を開く力があるので、このタイプにも有効である。






◎お客様体験談その4 15年間のリウマチ、慢性湿疹、口唇ヘルペス



63歳、女性、農家 
 

5.13

・主  訴: 15年間のリウマチ

・現病歴: 両手の指、両足の甲のところへ、腫れと痛み。天候が悪くなると痛みがひどくなる。
 食欲正常。尿は回数が多い。便秘気味。

 舌 質: 暗紅、中央部に亀裂
 舌 苔: 無苔

・既往歴: 7年前から慢性甲状腺炎(橋本病)、総コレステロールが高い(240位)

現在A大に通院中で、甲状腺炎とコレステロールの薬だけを服用している。

・弁  証: 風寒湿痺、陰陽両虚

・治  方: 去風散寒利湿、補陰育陽

・処  方: 独歩顆粒 30日分


6.12 

独活製剤を服用して20日目を過ぎた頃から、手の指の腫れがひいた。

足も甲のところの腫れがひいた。

むくみが取れて、痛みも取れた。

コップに塩をひとつまみいれて、独歩丸を服用した。

 舌 質: 紅、中央亀裂 
 舌 苔: 無苔

以上の経過を経て、雨や雪でも寒さにも身体が強くなり、痛みも全然こなくなった。


9.11 

以前から下腿部に湿疹が良く出ていて、皮膚科に行っても治りにくいと言われていた。

下腿部の湿疹はカサカサして痒くて、2年前から続いていて、慢性化(苔癬化)していた。

軟膏を塗ってもあまり良くならなかったので、あきらめて、そのまま放っておいた。

それが今年の3月頃から良くなって、今は完全に治った。

首の後ろにもよく湿疹が出ていたが、それも治った。


毎年春先と7月頃に鼻の下にヘルペス(単純疱疹)が出ていたが、今年は全然出てこなかった。

また、以前はよく風邪をひいていたが、今年は1回も風邪をひいていない。

以下現在まで継続服用中。


考察: 


@下半身の湿疹はタイプに分けると、寒湿、湿熱(肝胆系)、脾虚に分けられる。

独歩顆粒はこのうち、寒湿阻絡タイプに用いられる。

 
A下腿部は血液循環が悪くなりやすいところなので、淤血の状態も考えられる。

また、皮膚がカサカサしているのは、陰血の不足も関与していると思われる。

独歩顆粒は益気養血活血(えっきようけつかっけつ)ができ、また細辛、生姜、桂皮、泰ぎょうなどに経絡を通し、血の流れを良くする。


B単純疱疹(ヘルペス)は、「単純ヘルペスウイルス」のより感染することにより起こります。

初発時は保菌者との接触が原因となり、治った後も「神経節」に潜んでしまいます。

そして風邪をひいたり、日光にあたったり、ストレスや過労などの身体の抵抗力が弱っている時に、再発を繰り返してしまいます。

この人の場合は、そのうちの「口唇ヘルペス」です。

中医学の立場から検討すると、単純ヘルペスは上半身に出る場合は風熱型です。


方剤としては「天津感冒片+板藍茶+五行草茶」を用います。

また、根本には、身体の抵抗力不足(正気不足)があるので、体質改善に、十全大補丸補中益気丸などを用います。


独歩顆粒は第一に衛気を強め、また去風もできるので、三月(風湿)、七月(暑温)の風熱の邪気を寄せつけなくなったと言えると思います。

第二に、扶正し正気を強める働きがあるので、身体の免疫力がアップし、体質改善ができたのだと思います。







日本中医薬研究会では、「天空」という雑誌を発行しています。

この度、私が執筆した号は、
「天空 中成薬新報 夏の増刊号」です。

医師や薬剤師など、漢方の専門家向けです。

ですから、このページでは、
専門用語が多く、少し読みづらかったかもしれません。





お問い合わせは、こちらまで。

「痛み、しびれ」の漢方相談。経験は豊富です。


土屋薬局は、全国から 「痛み、しびれ」の漢方相談を受けております。

「痛みの漢方」「山形の漢方」を どうぞご利用くださいませ。


痛みの漢方相談に強いお店!土屋薬局


ファックス 0237−49−1651
電話漢方相談 0237−48−2550、または 0237−47−0033
メールでの相談は、下記のフォームからお願いします。