過敏性腸症候群の漢方療法(2)


山形県東根市 土屋薬局 薬剤師・国際中医師 土屋幸太郎



土屋薬局 中国漢方通信では、前回「過敏性腸症候群の漢方療法」を特集させて頂きました。

その後も、慢性の胃腸疾患の下痢や食欲不振、胃痛などのご相談が数多く寄せられています。


現代人の忙しい生活や複雑な周囲の自分を取り巻く環境で、
ストレスを感じたり、ストレスを溜め込んでしまい、
体の「要(かなめ)」である胃腸に負担をかけて不便を感じている人が多いようです。

「薬食同源」「医食同源」ですから、健康の基本は「快食、快眠、快便」にもありますように、
ふだんから胃腸を丈夫にしてご飯をおいしく食べていくべきです。


人間の体をリンゴの木だとしたら、胃腸は「畑」に相当します。

いくら剪定しても、農薬を散布して害虫を追い払ったとしても、
肝心な「畑」がしっかりしていないと、おいしいリンゴが生りません。

空からの滋養である雨や大地の豊富な栄養を吸収するためには、
「畑の強化」から始めましょう。

胃腸が丈夫になりましたら、生理不順や皮膚の病気やストレスに弱いなども
きっと改善していくはずです。


肥満・痩せ、ダイエットの悩みは「脾」の改善から」…中国漢方通信第43話より

ダイエットや痩せの体質改善にも、胃腸を丈夫にして新陳代謝を上げていくことが大切です。

「なぜ太るか?なぜ太れないか?」は、実は胃腸にあったのですね。


無排卵性月経と漢方薬(生理不順)」…ココログ版土屋薬局 中国漢方通信より

無排卵の生理不順とダイエットの関係です。


以上のコラムなども含めまして、参考になりましたら幸いです。

なお今回の「過敏性腸症候群の漢方療法(2)」は、
前回の内容よりもより「胃痛」にスポットを当てていますので、
健胃顆粒逍遥丸よりも
健胃顆粒と開気丸の2つを紹介する内容となっています。





お客様からのお問い合わせ


慢性的な腸炎で悩んでいます。

私は幼少の頃から、お腹が冷えるとすぐに下痢や軟便になります。

数年前から胃腸の動きを悪く感じたり、
お腹を押されても痛みを感じることがあります。

病院では、胃液が口内に上がってくるのは、
胃酸が逆流してくるからとの説明でした。

緊張したり、ストレスや悩み事などで、
逆流性食道炎になることもあります。

また同時に私はメンタルが弱いせいか、
ストレスなどで胃痛や食欲不振になることもあります。

食欲はふだんはありますが、胃もたれしやすいです。

若干、冷え性気味でもあります。





中国漢方では、胃が弱くもたれやすい、
腸が弱く下痢をしやすいといった症状は治るものと考えていますので、ご安心下さい。


中国医学では、消火器系の中枢を五臓のうちの「脾(ひ)」としています。


親から受継いで「腎(じん)」に蓄えられている「先天の気」に加え、
食べ物から「後天の気」を取り入れる消化吸収の働きを胃と協調して行うのが「脾」で、
胃腸が丈夫でないという体質は、まず大本の「脾」の働きが不足した状態とみるわけです。


「脾」が働かなければ、消化吸収が十分に行われないので、下痢をしやすく、
腸の蠕動(ぜんどう)運動が低下して、お腹にガスがたまり、
元気(文字とおり生命活動のもとになる気)が失われることになります。

また、「脾」は、「生痰の源」といわれ、
痰というのも「脾」の働きが衰えた結果生じる病理産物と考えます。

「脾」に痰が生ずると、めまい、立ち眩み、悪心嘔吐、
腹鳴(おなかがゴロゴロなる)などの症状があらわれます。


漢方薬では、「健胃顆粒」をお勧めします。


「健胃顆粒」は、「醒脾(せいひ)眠ったように働きが低下している胃腸を覚醒させる作用」をします。

また、「脾胃」の気のめぐりをよくすることで、
気の滞りによる鈍痛や腹部膨満感、腹鳴を取り去る作用もあります。


胃弱でお悩みの方は、「健胃顆粒」を
長く根気よく続けるという方法で、
体質改善をはかられるとよいでしょう。

https://tutiya.la.coocan.jp/kanpotusin39.htm

↑詳しくは、こちらを参考にして下さい。






もう一点、ご紹介致しますね。


現代はストレスの時代といわれるだけに、
ストレス性の胃腸障害に悩む人が増えているようです。

仕事上のトラブルなどに見舞われた際、胃の辺りがサーッと熱くなり、
胃酸が盛んに分泌されて胸焼けがしてくるという方も多いようです。


中国漢方では、気というエネルギーが体内を流れ、
これによって各臓器がスムーズに機能し、
新陳代謝が行われると考えています。


気のめぐりを良くして、臓器の機能をスムーズにする
働きを『疏泄(そせつ)作用』と呼び、
五臓六腑の中でも「肝(かん)」の役割と考えています。

ストレスがたまると、この「肝」の疏泄作用が悪くなり、
気が滞り、他の臓器にも異常が及ぶことがあります。

なかでも胃腸に影響を与えることが多いのです。

消化酵素や胆汁の分泌、胃腸の蠕動運動は、
「肝」の疏泄作用によって調整されています。

疏泄(そせつ)が悪くなると、胃炎や十二指腸潰瘍などが生じやすくなります。


下痢や便秘がなかなか治らず、
食欲不振、胃のもたれ、腹の張り、腹痛、吐き気などを
伴うケースもあります。

下痢や便秘の薬を使っても、
なかなかよくならない胃腸病には、
このような背景があることが多いのです。


対策としては、「肝」の働きを立て直すことで、
胃腸障害の改善をはかることが重要です。

その代表的な薬に「開気丸(かいきがん)」があります。



「開気丸」は、肝に働き、肝気の滞りをすみやかにとり去り、
疏泄をスムーズにする疏泄作用があります。

「開気丸」の飲み方は、1回5丸を1日2〜3回、
食間または食前にぬるま湯で服用します。


以上となりますので、ご検討くださいませ。

漢方薬を服用される場合には、
少なくとも半年から一年は
根気よく服用されることをお勧めします。

寒さ厳しき折、ご自愛くださいませ。





過敏性腸症候群の漢方療法」では、
逍遥丸と健胃顆粒の説明をしておりますが、
胃痛や逆流性食道炎のように胃酸が上がってくるときには、
胃気上逆と考えまして、健胃顆粒に開気丸をお勧めすることも多くなります。

胃酸が上がってくること、つまり逆流性食道炎は、
「胃気(いき)」が下方の腸にスムーズに降りなくなったこと、
つまり「胃気(いき)」が上逆していることを現し、
中国漢方では 胃気が正常な状態で下方に下りていけば、
胃液が口内に上がってくることや胸焼けなどの不快な症状の軽減になると認識しています。

開気丸は、胃気(いき)が上逆している状態を
スムーズに下降していくようにもっていきますので、
逆流性食道炎などの胃酸のトラブルに。

また肝気犯胃(かんきはんい)という、
肝臓の気が横逆しているときにも、
肝臓の気をスムーズに全身に流していきますので、
胃痛の軽減にも役立ちます。

この他、前回のコラムで紹介しています逍遥丸などの併用も十分に検討できますし、
効き目を期待できます。



「薬食同源」「医食同源」です。

胃腸が丈夫で、食欲があり、
毎日のご飯がおいしいことが、
健康で長生きする秘訣ですし、
あらゆる病気の改善の 「近道」になります。


健康一番。

秘訣は、「快食・快眠・快便」

過敏性腸症候群の漢方療法」も参考になれば幸いです。

ご相談は、漢方相談室のフォーム
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