機能性胃腸症(NUD)と漢方療法〜左の腹部の痛みで検査は異常なし

山形県東根市神町中央通り  鞄y屋薬局 薬剤師・国際中医専門員A級 土屋幸太郎

機能性胃腸症(NUD)と漢方療法〜左の腹部の痛みで検査は異常なし


Mさんは、64歳の女性です。

身長152cmで、体重は48キロで小柄で痩せ気味の体型です。

コーヒー屋さんをしています。


初回の相談日は、今年2005年の9月8日です。


Mさんは、左の腹部が今年の1月から痛みがあります。

胃や腸は消化器の専門医で診察してもらいましたが
異常が無かったです。

ただし良性のポリープがあり、定期的に検査していくことになっています。


Mさんは、チアトンとメイラックスを1日1回だけ服用しています。

(薬剤師として私が思うには、すごく良心的な処方だと思います)

チアトンは、鎮痙剤で、よくストレス性の胃痛などに使われます。

胃腸の副交感神経系に効き目があるんですね。

メイラックスは安定剤です。


チアトンやメイラックスとも、どちらもメジャーなお薬です。


さて、Mさんの左の腹部の痛みは、ちょうど盲腸のところだそうで、
病院での検査は異常がありませんが、
一週間のうちに半分くらいは痛みが続くそうです。


痛みの腹部を手で抑えても楽になりません。

横になると、だいぶ楽になるそうです。


食欲はありますが、食量は少ないです。

あまり食べられません。

便秘気味で毒草丸を服用しているそうです。


舌は、紅くて暗い感じ。苔はありません。

いわゆる高齢者に多い「陰虚舌(いんきょぜつ)です。


赤ちゃんやちびっ子たちは、
お肌がツルツルしていますが、
大人になると肌が乾燥するのは、
体の津液(しんえき)が足りなくなるという
陰虚(いんきょ)があるからです。

体液不足ですから、舌の苔が無くなってツルツルになり、
また更年期のような「のぼせ」や「ほてり」も起こりやすくなるのです。

喉も渇きやすいです。


タバコは1日5本。

コーヒー屋さんですから、コーヒーも飲まれます。


ここで生活習慣の養生法としては、禁煙して頂くことと、
空腹時にはコーヒーはお腹に悪いので止めてもらうこと。

コーヒーは、ブラックではなくて、
ミルクをたっぷりと入れてもらうこと。

コーヒーは、飲むにしても、
1日1〜2杯にとどめておいて、
食後に楽しむようにと指導させて頂きました。


(ちなみに、不妊の人はコーヒーは
女性ホルモンを乱す可能性があることと、
冷え性になりやすいので、コーヒーは控えるか
止めてもらっています)


あと食事の養生法は、まだまだいっぱいあるのですが、、
スペースの関係でいつかにしますね。

(近所の消化器科の先生の健康法は、
「寝る2時間前は食べない、飲まない」です。

ですから、実にスマートな体つきをしていますし、
一緒に学校給食を食べるときも、
ご飯を少し残したりして健康に気を使っています。

さすがです)



ここで、NUD(機能性胃腸症)について簡単に述べましょう。


「きょうの健康 2005年4月号」より

50ページ。


胃の悩み

胃もたれや胃痛などの症状があっても、
胃に病変が見つからないことが多い。


○胃の悩みを抱える人に多い「機能性胃腸症」


胃もたれや胃の痛みなどの症状は、日常的に多くの人が経験しています。

ところが、こうした胃の悩みを抱えて受診した人の胃を内視鏡検査で調べると、
潰瘍などの病変が見つからないことが、意外に多くあります。


このように、詳しい検査をしても病変が見つからないのにもかかわらず、
胃の症状が起こるものを「機能性胃腸症(NUD)」といいます。


これまで、日本では、「胃の中に見える病変が見つからなければ、
病気とは捉えない」という考え方が主流でした。

しかし最近では、欧米などのように、「目に見える病変が見つからなくても、
患者さんが症状を訴える場合には、機能性胃腸症と捉えて治療を行う」という考え方に変わってきました。


ということで、このこともMさんには、よーく説明しまして、
漢方も詳しく説明して帰って頂きました。


開気丸は、「胃痛、生理痛」など、腹部の痛みを軽減する力に優れます。

理気薬(りきやく)と呼ばれ、「通じざればすなわち痛む」ですから、
気の流れがスムーズになっていけば、腹部の痛みや不快感も解消しやすいのです。


理気薬とは、「詰まっている気を植物の香りで、スムーズに流していく」ことに
ほかなりません。


健胃顆粒は、補気薬(ほきやく)です。

胃腸を根本から丈夫にして、胃腸の働きを改善していきます。

食欲不振や胃もたれ、軟便、下痢など総合的に胃腸症状の改善に効果的です。


開気丸と健胃顆粒の組み合わせは、理気薬と補気薬の併用ですから、
とてもバランスがいいです。


麦味参顆粒は、胃腸を丈夫にする意味と舌が紅くて、
苔が無いという体が乾いている「陰虚(いんきょ)」の体質改善の意味も持たせました。

端的にいえば、滋養強壮剤と思ってもらってもいいです。



9月28日


県立病院で、MRIをとったが異常が無かった。

以前よりも、お腹の調子は良いような感じ。


舌:紅い 苔:無い、亀裂もあります。


体重は2キロ減りました。(養生したからです)

口渇やほてりはありません。


また同じ処方の、開気丸と健胃顆粒、そして麦味参顆粒を併用してもらいました。



そして今日の10月27日です。


腹部の痛みは、まったく無くなりました。

体全身も調子がいいそうです。


調子が良ければ、漢方薬は当然に飲み忘れます。


「飲み忘れ」はとってもいいことですよ〜と説明しまして、
自分のペースで今後はお続けしてくださいと説明しました。


これからは、Mさんは、1日1回の服用にしてみるそうです。


ということで、「良かった、良かった」です。(*^_^*)


胃腸の状態を良くすることは、
漢方は得意なことが多いですので、
悩んでいる人もしっかりと舌診(ぜっしん)をしてもらえる漢方薬局などで
相談してもらうと良いと思います。


次世代フォーラム2005とジャングルジャングルの紅葉」のときに
一緒に撮影した写真です。

秋が深まるここは山形、東根からの写真とお客様の嬉しい話を紹介させて頂きました。





「薬食同源」「医食同源」です。

胃腸が丈夫で、食欲があり、
毎日のご飯がおいしいことが、
健康で長生きする秘訣ですし、
あらゆる病気の改善の 「近道」になります。


健康一番。

秘訣は、「快食・快眠・快便」

漢方では一人一人の体質に合わせて相談していきますので、詳しくはご相談してください。