無名コラム

01/01/04

その男、凶暴につき
東根の 本間朋晃



その男、凶暴につき、管理を要する。


生まれは、山形県 東根市(ひがしねし)。

1976年11月18日。

この世に生を授かった。

東根小学校、東根第一中学校、東根工業高校と 学業に励む。

その男に、何故 今の職業を選んだか 尋ねていないが、
秘めた闘志が 胸の奥深く 燃えているに違いない。


身長 181cm。

体重 102kg。


彼に初めて会ったのは、今から5年くらい前のことだ。

暑い 燃えるような日。

ごつい男が 肩を怒らせながら、土屋薬局にやってきた。


「腰痛に効く漢方薬は 、ありますか?」

私は、血流計で 彼の 「血の巡り」 を測定し、
舌診(ぜっしん) を行い、 「舒筋丸(じょきんがん)」という漢方薬を勧めた。

彼の仕事は、腰にくるらしい。


「みちプロって有名で、流行っているよね?」

「ああ、そうなんですよね。 僕も一時期 ちょっとだけ入団してたんです」

「え? 凄い! 僕も プロレスファンなんで、凄く嬉しい。
で、今は 何やってんの?」


「みちプロ(みちのくプロレスのこと) を止めてからは アニマル浜口ジムで 特訓してたんですよ」

「それから 大日本プロレスに入団しました」

「ちょうど、今は 夏休みをもらって こっちに帰って来たんすよ」

「凄い! 凄い! これから、がんばってね! 応援する」



彼の得意技は、

クレージー・エルボー(ランニングエルボー)、ファイヤーサンダー、フランケンシュタイナー。


趣味は、日焼け。

真っ黒に輝く、鋼鉄の肉体で 武装している。


ボブワイヤード(有刺鉄線)、 蛍光灯、 ガラス、 マスタード、 レモン、 ソルト、
画鋲、 ラダー(はしご)、 なんでも 持ってこい!



俺は 男だ。



そうさ、 彼は 世界最強なんだ。







00年10月26日、午後7時26分。

彼はやってきた。

そろそろ お店を閉める準備をしようかと考えていたときに、
肩を怒らせながら やってきた。


「薬局さ〜ん。 チケットを買ってくださいよ〜」


翌日に東根市民体育館で
大日本プロレスの興行があるんだ。

当然、私は 本間朋晃君の味方だ。

昨年も 「本間朋晃 凱旋興行」 を見に行った。

素晴らしい試合だった。

コーナーに、ベニヤ板にボブワイヤーを 貼り付けた
デスマッチだった。

試合に 彼は勝利し、
見事に メインイベントの重責を 果たしたのだった。





日本を代表するプロレスラーは、
顔が違う。

このように迫力のある男は
滅多にいない。

5年くらい前に会ったときよりも、
額の傷が増え、
いっそう プロレスラーらしくなっている。



傷も勲章のうちだ。



めげるな! 本間朋晃。




そんなにチケットを買う金は無いが、
明日は
君を応援するよ。

毎週、毎週、
週刊プロレスや週刊ゴングで
君の勇姿を楽しみにしている。


私も
根性や勇気、体があったら
プロレスラーになりたいと
夢 見た時期があったんだ。




「薬局さ〜ん。僕の健康状態は どうっすか?」

舌診(ぜっしん) してください」

偉い。

君は、中国漢方を理解している。




中国漢方では、患者さんの体質を判断するために
「弁証論治(べんしょうろんち)」 を行う。

「弁証論治(べんしょうろんち)」 とは、
中国漢方の絶対的な柱になるもので、
「証(しょう)」を 「弁(わ)けて」 「治療」を 「論ずる」という意味になる。

この治療方針を決定づける 「弁証論治」は、
患者さんの情報を集めることから始める。


情報を収集する方法としては、
「問診(もんしん)」 「望診(ぼうしん)」 「聞診(ぶんしん)」 「切診(せっしん)」
と呼ばれる 4つの診察方法を用いる。


「問診(もんしん)」 は、主訴(しゅそ)―主な訴え、身体状況、既往歴(きおうれき)
などを 患者さんに問うことで情報を収集する。
 

「望診(ぼうしん)」 は、全身や局所の状態 あるいは 舌の状態をみることで
情報を収集する。



これが、 「舌診(ぜっしん)」 と呼ばれる 情報を収集する重要な方法になるのだ。


ちなみに、 「聞診(ぶんしん)」 は、患者さんの音声を聞いたり、
排泄物の臭い(鼻水、タン、尿など)を嗅ぐことで情報を収集する。


「切診(せっしん)」 は、体に触れたり、脈を取ることで情報を収集する。
脈を取ることも 中国では重要視され 「脈診(みゃくしん)」 と呼ばれているのだ。





「舌診(ぜっしん)」 は、舌を観察することで、気、血(けつ)、津液(しんえき)
 の状態や 邪気(じゃき)の 性質(寒熱) や
種類 (淤血(おけつ)、水湿、痰飲(たんいん)など)
あるいは 部位 (表裏)などを 把握していく。


もっと具体的に 「舌診(ぜっしん)」 を述べていくと、
「舌診(ぜっしん)」 とは 舌質(ぜっしつ) と 舌苔(ぜったい) を観察することを指す。


舌質(ぜっしつ) とは、舌本体のことであり、
舌質(ぜっしつ) の色と 形体とを見ることが 主体となる。


舌苔(ぜったい) は 舌表面上の 付着する苔(こけ)状のものをさし、
おもに 色、厚さ、潤いを見ることになる。

(以上、参考文献は 「わかる中医学入門」 邱 紅梅(チュウ フォンメイ)先生署
燎原書店を参考にした。多謝!)





最近は、テレビのCMで 苔は口臭の元だから、よく歯磨きをしよう!
という内容を しばしば見かけるが、 それだけではないのである。



実際には、「舌診(ぜっしん)」 をすることにより、
健康状態や 病気の予後、進展状況が認識できるのだ。



まず 舌の形では、痩せている舌は 体の 陰血(いんけつ)不足があり、
疲れやすい、発熱しやすいとか、
大きな舌は 体に過剰な 病的な水分 が溜まり 
新陳代謝が悪いので 冷え性 などといったことが理解できる。


もし 舌の脇に 歯型が付いていれば、それは 歯痕(しこん) といって、
腸虚弱タイプ で 疲れやすく、風邪をひきやすい、
活動したときに病状が悪化するなどである。



舌の表面上に、亀裂があることを認める場合も多いが、
これは 老人に多い。

つまり、体の 陰血不足―水分不足 で 体の潤いが不足しているのだ。


たとえば、冬になると 肌が乾燥し、皮膚掻痒症となったり、
目が乾燥し ドライアイになっている、口渇があって 糖尿病が進行している、
などが推測できる。


若い年代にも この舌表面上の亀裂を認めることもあるが、
アトピー性皮膚炎で 体に 過剰な炎症反応 があり、病的な熱 が発生していることを知る。



舌の色を見てみよう。

舌の 紅さが濃い場合は、体に 過剰な熱 がこもっているケースが多い。


私の経験では 中高年の男性に比較的に多く認められる。

一つの原因として、日常生活の食生活が挙げられる。

お酒の過剰摂取、辛いもの、油っぽいもの、味の濃いものの食べ過ぎや
タバコの吸いす などが関係している。


これらは、みな 体に 病的な熱 を発生させ、体の潤いを奪ってしまうのだ。

すると、舌の色は、濃い 赤みを しだいに帯びてくることとなる。



一方、舌にまったく赤みを認められずに、白っぽい舌を見ることもある。

女性に多いタイプだ。


まず、貧血であるならば、とうぜんにヘモグロビンが不足するので、
舌は 薄い色になる。


中国漢方では、「血(けつ)」は 私たちの体に 潤いと栄養、温熱を与えていると認識されている。


冷え性で悩んでいる ご婦人は 非常に多いのだが、
「血(けつ」が 不足している― 「血虚(けっきょ)」タイプ が原因であることが
しばしばある。

「血(けつ)」の温かさが 手足の末端に行き届かないのだ。

このような症状を改善するためには、「婦宝当帰膠(ふほう とうき こう)」などの
方剤が有効である。



頭痛、肩こり、心臓疾患、生理痛、冷え性、不妊症、神経痛、など
血行不良―淤血(おけつ) が絡んでいるような場合の舌は、
暗い色を帯びたり、紫色 になる。

これららの舌の色は、いわゆる 血液のドロドロした汚れ を現している。






舌の苔も 同様に 深い意味がある。


苔が 白いのは正常であるが、それが厚くなると 病的と判断する。

体に 寒湿(かんしつ)が溜まっていたり、 冷えが極度に進んでいたり、
胃腸疾患を認めるケースが多々ある。


よく、「口内炎は胃腸が悪いから」 と耳にするが、
あながち 迷信ではないのである。


苔が黄色く、口臭が強いのは、もう一回述べるが、
歯磨きをしないからではない! 

ふだんの日常生活で、酒、タバコ、辛いもの、味の濃いものが嗜好だったり、
過剰に抱えきれない ストレスを持っているケースも 可能性があるのだ。

黄色は、熱 の印 だ。


したがって、私たち 中国漢方家は 口臭も 体内に真の原因があるに違いないと
判断していくのだ。

これには、潟火利湿顆粒(しゃかりしつかりゅう)が 著効を示すことがある。


よく 高齢者に 舌の苔を 認めず、
ツルツルの まるで鏡のような舌を見ることがある。

これは、体に潤いが足りなく、
老化が進行しているサインだ。

専門用語で言うならば、陰虚(いんきょ)と呼ぶ。

また もう一つの可能性としては、
胃腸機能が かなり落ちていることも考えられる。


中国漢方では、八仙丸(はっせんがん)杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)
麦味参顆粒(ばくみさんかりゅう)などを使用し、 
乾いた体に潤いを与え、若さと元気を取り戻す方法をとる。





さて、もう一度。本間君の場合は。。



舌の色は、やや暗紅。

舌の苔は、やや厚くて 白い。

舌の先がちょっと赤みがあるかもしれない。



「若干、血行不良が絡み、日常生活では 冷え冷えのビールやジュースを好み、ちょっと ストレスに弱いかもしれないで証」

と 舌診でこれだけの情報が得られる。



がんばれ!本間朋晃!

明日のプロレスは 君の時代だ。


プライド や K1 がなんだ!

 
「シュートを超えたものがプロレスである」
(ジャイアント馬場さんの名言)


俺は 男だ。


そうさ、 彼は 世界最強なんだ。




付記:

 この作品は、東根が誇る
日本最強のレスラー!
 本間朋晃君の了承を得て、
作成しています。

今年も みんな待ってる。

がんばれ。