慢性頭痛や神経痛の漢方薬


「神経の病気…頭痛・神経痛」

 


慢性頭痛や神経痛の漢方、漢方薬

山形県東根市神町中央通り 土屋薬局 薬剤師・国際中医専門員A級 土屋幸太郎






○頭痛の原因、症状とは




■原因・症状


頭痛は、大きく二つに分けることができます。

脳腫瘍やくも膜下出血などの、命にかかわるものと、命に別状はありませんが慢性的に再発を繰り返すタイプです。


日常よくみられるのが、後者の慢性頭痛です。


慢性頭痛の代表的なものとしては、「緊張型頭痛」と「片頭痛」の二つがあります。


緊張型頭痛は、もっとも頻度の高い頭痛で、後頸部や肩などの筋肉の緊張によりおこります。


ストレスや精神的な緊張、疲労によって筋肉が強く収縮すると、乳酸などの、痛みをおこす物質がたまって、痛みをおこします。

特徴としては、後頭部から頭全体が締めつけられるような、重苦しい痛みがあります。
 

片頭痛は、脳のなかや周辺にある血管が、初め収縮したあと、過度に拡張するためにおこる 血管性の頭痛です。

脈拍に合わせてズキズキと痛み、吐き気や嘔吐などの症状を伴い、またその名が示すように、頭の片側が痛むことが特徴です。


また頭痛には、高血圧、風邪、月経障害など、他の疾患によるものもあります。


神経痛は、神経全般の痛みのことで、末梢神経の支配領域に一致しておこることが特徴です。


原因がはっきりしている場合は、根本的な治療を行ない、原因の分からない場合は、痛みを抑える治療が必要となります。

骨や関節の変形によって神経が圧迫されている場合は、理学療法、神経ブロック、手術などがおこなわれます。







中国漢方による慢性頭痛の漢方、漢方薬



■中国漢方による漢方治療


慢性頭痛には、中国漢方による治療が適しています。

中国医学では、風邪のような感染性の病気によるものを外感頭痛といい、内因性の頭痛を 内傷頭痛といいます。

慢性頭痛は内傷頭痛であり、次のようなタイプとその治療法があります。





@気虚(ききょ)頭痛の漢方




疲れたときに頭痛が強くなります。

過労によって、胃腸が弱くなり、食物や体の気血(きけつ)の栄養が頭部に行き届かなくなり、頭痛がおこります。

息切れや倦怠感、食欲不振、下痢、軟便、便秘なども伴います。


補中益気湯(ほちゅうえっきとう)で 胃腸を強くして、体力をつけて治します。

玉屏風散、肺と胃腸を丈夫にして、頭痛を軽減する方法もあります。



A血虚(けっきょ)頭痛の漢方




めまいがして、頭がふらつくことの多い頭痛です。

顔色が悪い(顔面蒼白)、動悸、不眠などの症状があり、女性では月経前後に おこることもあります。

生理の後半には、生理により血液が不足するために、血虚の頭痛が おこりやすいです。


生理前半の頭痛、月経前症候群(PMS)の頭痛は、血虚頭痛にプラスして、気滞頭痛が加わっていることが多いです。

(気滞頭痛は、後述します)

四物湯(しもつとう)、十全大補丸(じゅうぜんだいほがん)などで、身体の増血機能を強くすることで解消していきます。



B腎虚(じんきょ)頭痛の漢方




痛みは強くないが、慢性化する頭痛です。

めまい、耳鳴り、手足が冷える、足腰がだるい、力が入らない、物忘れなどの症状を伴います。

一般には、年配の方の老化現象に多くみられます。


六味丸(ろくみがん)、八味丸(はちみがん)、杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)、独活寄生湯、海馬補腎丸(かいまほじんがん)、牛車腎気丸などを証にあわせて用います。



C気滞(きたい)頭痛の漢方




ストレスが原因となります。

週末のほっとしたときに、頭痛が起こることもあります。

気滞頭痛は 緊張型頭痛や、女性の人では、月経前症候群(PMS)を伴う頭痛などが 知られています。

イライラしたり、ため息をつくことが多いです。


逍遥丸や加味逍遥散などを服用して、ストレスを解消していきます。

排卵時の不調や生理前の不調(PMS)にも、これらの漢方の方剤は有効です。



D肝火(かんか)頭痛の漢方




片頭痛や、高血圧の人に多い頭痛です。

熱感、赤ら顔、目の充血、口が苦い、口渇、難聴、便秘などの症状を伴います。

気滞で、ストレスが長期間溜まってしまい、うまくストレスを解消できないと、気がこもってしまい、「熱」に変わってしまうのです。


肝火頭痛は、したがって気滞頭痛の要因も含みますので、イライラしやすかったり、貧乏ゆすりをしたり、怒りっぽい人に多いです。


わりと男性の短気な人に見られやすいです。

潟火利湿顆粒、釣藤散(ちょうとうさん)などを用いて、体の興奮状態を抑えます。


また慢性化して前期の症状に、動悸、物忘れ、足腰がだるいなどの症状が加わった状態を肝腸上亢(かんようじょうこう)とよびます。

瀉火補腎丸、杞菊地黄丸、星火牛黄清心丸、降圧丸を用います。




E痰濁(たんだく)頭痛の漢方




水分のめぐりが悪く、頭が重く痛むものをいいます。

頭痛は、しつこく長引くことがあります。


めまい、胸がムカムカして悪心、嘔吐なども見られ、舌の苔は厚くなります。

胃腸が弱い人や、水分の取りすぎによることが多く、雨の日や低気圧前線にも左右されやすいです。


半夏白朮天麻湯(はんげびゃくやくてんまとう)、星火湯胆湯、五苓散、呉朱萸湯などを用いて、水分の代謝を改善して治します。



F淤血(おけつ)頭痛の漢方




血液がドロドロしていて、血行不良となり、淤血(おけつ)の症状が特徴です。

肩こりを伴う緊張型頭痛に多く見られやすいです。

痛みは固定痛で刺されたように激しいときもあります。

舌は暗い感じで、チョコレート状の斑点がみられるのが特徴です。


冠元顆粒や田七人参(でんしちにんじん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりゅうがん)などで、血液をサラサラにして 血流を改善します。








○中国漢方による神経痛の漢方、漢方薬




中国漢方医学による治療は、痛みを取ることと同時に、漢方で体質改善を行い根本治療を目標とします。

部位別に漢方のタイプを分けてみましょう。








@顔面(三叉)神経痛、上腕神経痛の漢方




顔面の片側が激しく痛む、くびの片側、肩、腕、手と広い範囲におこる神経痛です。


中国漢方医学では『肝は筋を主る』としています。

ふるえや痛み、しびれの原因は、肝臓が弱って筋肉に 栄養や血液を与えられないからです。


根本治療として、杞菊地黄丸、独歩顆粒などで肝臓を強化し、筋肉に栄養・血液を与えて、しびれや痛みを抑めます。

痛みが強いときは、血行が悪くなっていることが多いので、血行を良くする漢方薬などで血流を改善します。


また風や寒さや、湿気などで痛みが増す人は、葛根湯、麻黄附子細辛湯、桂枝加朮附湯、勝湿顆粒などを併用します。

(漢方コラム  梅雨入りとフィリピン   夏はビールがうまいが も参考にしてください)




A肋間神経痛の漢方




脊椎から肋骨に沿って、激しい痛みが突然おこります。


肋間神経痛の原因として、淤血(おけつ)による痛みや、また脇腹は肝臓の経絡と認識しますので、肝系の「気」が詰まって 流れていないことなどが考えられます。


「通じざれば、すなわち痛む」という法則が中国漢方にあります。


経絡をスムーズに通していくために、「ストレスを緩和する漢方薬」で肝臓の「気」を巡らせ、血液をサラサラにしていくなど、総合的に肋間神経痛を改善していきます。




B大腿神経痛・坐骨神経痛の漢方




大腿ヘルニア、椎間板ヘルニアなど、骨や関節の変形による神経の圧迫によっておこります。
 

中国医学では、足腰のしびれや痛みは、五臓でいう 「肝腎不足(かんじんぶそく)」からおこると考えます。


肝は筋を主り、腎は骨を主ります。


また 「肝は膝」に、「腎は腰」に関係があるとしています。


人間の体を、樹木に例えるならば、肝と腎は、「太い幹」と地中に深くはっている 「根っこ」に相当します。


したがって 肝腎が弱ってくると、樹木でいう根のところが腐ってくるので、体の老化がおこり、骨や関節の変形で 痛みが生じやすいのです。


中国漢方医学による治療は、その根本である「肝腎の土台」を強化する方法をとります。


杞菊地黄丸や独歩顆粒、知柏地黄丸、海馬補腎丸などを用いて、肝腎を補うことが基本です。

同時に気血の流れを改善するために、血行を良くする漢方薬を併用すると効果的です。


冷えや寒さに弱い人には、当帰を主成分にした漢方薬、八味丸、桂枝加朮附湯、真武湯(しんぶとう)、麻黄附子細辛湯、加工附子末などを併用すると良いでしょう。



家庭の漢方薬頭痛、神経痛の漢方薬

今回の「痛み、しびれを楽にしよう!第7話 神経の病気」は、
「わかりやすい家庭の漢方薬 第七章「神経の病気」」に、
土屋幸太郎が執筆した文章です。

「寿」さま、ありがとうございます。


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