01/4/24
今年の冬は、20年ぶりの豪雪でした。
来る日も来る日も、大雪の毎日で なんでこんな辺鄙(へんぴ)なところに住んでいるのだろう?
日本のほとんどは、温暖で 東京なんか 雪がたった数センチ降るだけでニュースになるのは、
ずるいものだと思っていました。
(私の苦闘の歴史は「雪は天から送られた手紙である2」をご覧下さい。
ちなみに、沼津の小島さんは「僕って、字が下手なんだなあ」と、そのページを読んだ感想を述べていました。(^^ゞ)
ところが、そんな山形にも遅い春がやってきました。
中学生の時に、英語の授業では 「Spring has come」(春は来ました)と勉強して、
なんと 柔らかい 良い英語だろうと思ったのですが、まさに 山形の春は そのような感じなのです。
草花が いっせいに芽を出し、花を開かせる。
自然の生命力とは、素晴らしいものです。
特に、冬が長く、厳しいだけに、春の喜びは 格別なものがあります。
これは、都会の人には 分からない、雪国に住むものだけが味わう特権なのです。
今、この文章を作成しているのは、01/4/24 現在なのですが、
01/4/15の山形の風景を紹介していきたいと思います。
この時は、東根(ひがしね)では 桜も咲いていませんでしたし、リンゴの花も咲いていませんでした。
では、そろそろ時間です。
皆さまも一緒に 私と探索していきましょう!
これは、何の蕾(つぼみ)でしょう?
ヒントは、左の画像の後ろ側を よく見てください。
なんだか、鉄のパイプのようなものが見えますね。
これは、「ハウス」と呼ばれるものです。
山形県でこのように、大切にされるものは?
ピン!と来ている方も多いと思いますが、これは山形を代表する果実の蕾です。
そうです。 「さくらんぼ」です。
この蕾(つぼみ)には、命を芽吹かせようとする生命力が宿っているのです。
これから、初夏にかけて この蕾は 黄金のフルーツになります。
暗雲垂れる山並み。
この場所は、私たちの祖先が苦労して、開拓をした場所です。
昔は、何もなく、水も出ない扇状地を 必死の思いを込めて、
生きていくために、豊かになるために、黙々と荒野を耕しました。
扇状地というのは、水が沸かないので 田んぼにはなりません。
そこで、果樹を植えて育てましょう!ということになったのです。
私が子供の頃は、神町(じんまち)小学校に通っていましたが、
神町小学校の校歌には、その開拓団魂が歌われています。
神町小学校校歌
若木(おさなぎ)原の草分けて そそいだ汗の尊さを
たわわに実る果樹園の くれないの実に しのびつつ
汲もうよ 豊かな 知識の泉
ああ われらわれら ふるさとの文化 起こすもの
あらしは吹けど 大空に 星座の光り にごりなく
春よみがえる 木々の色 友情の花 輝いて
歌えば みなぎる 希望の調べ
ああ われらわれら 故郷(ふるさと)の平和 築くもの
小学校の頃は、ただ 元気よく歌っているだけでした。
ところが、大人になるにつれて、その歌詞に込められた深い意味を知り、
私たちの祖先の偉大さに気付くのです。
また、ここ神町(じんまち)は、戦争末期に海軍飛行場が建設されたところです。
山形県で唯一、アメリカ海軍の名戦闘機 グラマンの機銃掃射を受け、
犠牲者をだした土地です。
若木(おさなぎ)山には、今も 防空壕が残っています。
一昨年に亡くなった祖父は、生前に
戦争中は静岡に動員されていて、
わずか30cm横を グラマンの機銃が通り抜けていったと言っていました。
ここ、神町の開拓団の村からも、赤紙によって 多くの男性たちが
沖縄戦に動員され、陸軍第38師団に編入させられ、大きな犠牲者をだしたのです。
私たちは、先祖のためにも この平和を守る使命があります。
さて、上の2枚の画像は、場所を変えています。
山形空港近くで撮影しました。
遠くには、月山、葉山連峰が眺められ、山の峰峰(みねみね)には 薄っすらと白い雪が積もっているのが分かります。
この梅の老木は、今年の冬の豪雪を耐え抜いて、可憐な花を咲かせています。
古来から 梅を歌った和歌は、別れや過去の思い出を歌っているものが多いのですが、
私にとっての梅は 春の喜びに他なりません。
さて、大塚敬節先生の「漢方と民間薬百科」(昭和41年発行 主婦の友社)より、
「梅」を紹介しましょう。(いつも、引用させて頂きましてありがとうございます)
ウメ 梅 (バラ科)
別名 ムメ
薬用部位 実 花 根
主として実を用い、梅干し、梅肉エキス、梅酢、梅酒、烏梅(うばい)にして用いる。
梅肉エキスの製法
成熟期には近いが、まだかたくて青く、少しも色のつかない、きずのないものを選んで、
陶器のおろし器でおろし、これをもめんの布かガーゼを数枚重ねたものに包んで強くしぼり、青い汁をとる。
この汁を、なるべく浅くて平たい容器に入れ、毎日日光に当て、
たびたびかきまわしながら蒸発させると、水あめのようにネバネバした梅肉エキスができる。
作るのに二週間から三週間くらいはかかり、青ウメのときの量の40分の一くらいの量のエキスがとれる。
これを、びんかつぼに入れてたくわえておく。
これを簡単に作るには、汁を陶器の容器に入れて、弱い火で煮ながらよくかきまぜる。
梅酢の製法
ウメの実を塩づけにし、出てくる汁にシソの葉をもんで入れると、赤い色になる。
これが梅酢である。
梅酒の製法
粒が大きく、きずのない豊後梅(ぶんごうめ)を選び、洗わずに乾いた布でていねいにふく。
ウメ三十個につき酒2l、砂糖500gをまぜて、広口びんかつぼに入れて、目ばりし、
半年から一年くらいそのままにしておく。
烏梅(うばい)の製法
フスベムメともいう。
成熟前のウメの実の種子を去り、肉だけをわら火の煤煙でくすべる。
または、種子のはいったままで素焼きの容器に入れ、黒焼きを作るときの要領で、わら火で蒸し焼きにする。
薬効
食あたり(食傷) 下痢 嘔吐 腹痛 回虫駆除 歯痛 口内のはれやくちびるの荒れ かぜ(感冒) せき(咳嗽)
頭痛 乗り物酔い 暑気あたり 日射病 吐血 下血 はれもの やけど 打撲(打ち身) とげのたったとき
ムカデ、ネズミの噛み傷 水虫(汗疱状白癬) なまず(癜風でんぷう) たむし(頑癬) 痔 眼病 神経痛
気つけ
使用法
1 食あたり 下痢 嘔吐 腹痛
食あたりには、梅酢をちょくに一、二杯飲む。
とくに水のような下痢便の出るときにきく。
また、腹が痛んで吐いたり下したりするときには、梅肉エキスをダイズ粒くらい、水で薄めて一回に飲む。
この場合、飲みにくければ、砂糖を少し入れてもよい。
一回でよくならなければ、少し増量してつづけて三、四回飲んでもよい。
梅酢、梅肉エキスのない場合には、梅干し、または烏梅(うばい)の一個分くらいを、せんじて飲む。
また、下痢のやまないときには、烏梅を粉末にしたものを5gほどを、重湯(おもゆ)で飲んでも効がある。
胆嚢(たんのう)結石のため疝痛(せんつう)発作を起こし、ひどい腹痛を訴えているものに、
梅干し番茶がきたという記事を見たことがある。
作り方は、ふつうの茶わんに、大きい梅干しなら一個、小さいものなら二個、
それに三分の一くらいの おろしショウガと小さじ一杯の砂糖を加え、しょうゆを少し入れ、
ほうじた熱い番茶を、茶わんがいっぱいになるほど注ぐ。
これをすぐ服用する。
嘔吐のとまらないときは、ウメの花を陰干しにしておいたものを、
粉末にして飲むとよいといわれている。
2 回虫駆除
回虫を下すには、烏梅と等量のサンショウの実の殻(黒い種子は除く)を粉末にしてまぜ、
これを米のりで丸薬として、一回に3〜6gを空腹時に飲む。
また、回虫で腹痛のあるときには、梅干しを黒焼きにして お湯で飲む。
3 歯痛
梅干しの肉とミョウバンを黒焼きにして、痛む歯にぬる。
梅干しの黒焼きだけでもきく。
また、痛む歯の側のほおに梅干しの肉をはるとよい。
4 口内のはれやくちびるの荒れ
口内がはれたり、舌、くちびるが荒れたものには、梅干しの黒焼きをぬる。
5 かぜ
かぜのひきはじめには、梅酢をちょくに一杯ほどとって、茶わんに入れ、砂糖少々を加え、
いっぱいになるまで熱湯を注いですぐ飲み、そのあと熱い うどんなどを食べてあたたかにして寝ると、
汗が出てなおる。
また、梅干しを一つか二つ、炭火にのせて黒くなるまで焼き、茶わんに入れて砂糖少々を加え、
熱湯をいっぱいになるまで注いで、すぐに飲む。
6 せき
気管支炎や肺炎などで せきの出るとき、のどの痛むときなどには、梅酒をガーゼにひたして、
胸肺部または のどを湿布する。
この方法は、医師の治療を受けながらでも できる補助療法で、治療を早める。
7 頭痛
種子をとり去り、肉のほうを内側にして、こめかみにはりつける。
8 乗り物酔い
梅干しを、へそに当てておく。
または、梅干しを口にふくんでいてもよい。
9 暑気あたり 日射病
梅酒または梅肉エキスを飲む。
10 吐血 下血
血を吐いたり、下したりしたときには、梅干しの黒焼きを飲む。
11 はれもの
指のはれ、乳房のはれには、梅干しの肉をすりつぶしてはる。
俗に 「あせものより」といって、乳幼児の頭などに ねぶとのような はれものができ、
これが化膿したときは、梅干しをはれものの上におき、そのまん中に穴のあいた硬貨を当てて軽く押すと、
膿が出てなおる。
しかし、化膿しないうちに押してはいけない。
また、はれものがひどく痛むときには、梅酒をガーゼにひたして罨法(あんぽう)すると、痛みが軽くなる。
12 やけど 打撲
梅酢をぬる。
また、梅酢を小麦粉でねって、打撲したところにはる。
乾いたら新しいものととりかえる。
消炎の効がある。
13 とげのたったとき ムカデ、ネズミの噛み傷
とげのたったときは、梅干しの肉をすりつぶしてつける。
ムカデやネズミにかまれたものには、ウメの種子の中の仁(にん)をすりつぶして、酢でねってつける。
14 水虫 なまず たむし
ウメの若葉を刻んで、ふろに入れて入浴すると、水虫、たむしに きくといわれている。
なまずには、梅干しの肉に、松やにの粉末をまぜてつける。
15 痔
梅干し三、ホオズキの実五、ヨモギの葉一の割合にまぜて、黒焼きとし、ゴマ油でねって、
痔瘻(じろう)、痔核の痛むとき、患部にぬる。
16 眼病
目にくもりのかかったとき、青ウメの実に少しまぜてこすり、泥状にしてつける。
17 神経痛
梅酒をガーゼにひたして罨法(あんぽう)すると、疼痛(とうつう)が楽になる。
18 気つけ
梅肉エキスのダイズ粒くらいのもを、水で薄めて一度に飲ますと、気つけ薬となり、脳貧血などにもきく。
01/4/17に家の近所の敷地内の畑で撮影しました。
梅の奥にたれやら住んでかすかな灯(漱石)
では、ないのですが、
隣は警察だし、ドキドキしてしまい、
この撮影が終わって
さあ、店に帰ろうと思った瞬間
ガッシャーンと大切にしていたデジカメを見事に
アスファルトの上に落として 壊してしまいました。
すぐに、新しいデジカメを買ったのですが、
反省して デジカメを持っているときは
必ず ひもを首にぶら下げて 落とさないようにしています。
(「ジョセフィン 虹を夢みて」に 事の転移を詳しく述べています)
しかし、それにしても
この文章をアップしているのが、4/26ですが、
もう ほとんど梅の花は散ってしまいました。
花が散ってしまうのは、寂しいものです。
当店のお客様でも
桜は散ってしまうから嫌い!
という もっともな意見を述べる方もいるくらいです。
しかし、命短しですから、
古来から 私たち 日本人は
その一瞬を愛し、歌にしてきたのでしょう。
梅や桜の花が咲いたとき、
耐えた冬を忘れ
春の喜びにひたり、
散りぎわに
次の季節の訪れを感じとる。
四季がある国に生まれて 良かったです。
では、最後に梅の有名な一句を紹介します。
東風吹がば匂いおこせよ梅の花あるじなしとて春は忘れそ(菅原道真)
「梅干しづくり」03/08/04追記です。
我が家(土屋家)の梅干しづくりの様子をレポートします。
2003年7月30日撮影です。(撮影者 土屋幸太郎)
今年は、梅雨寒で夏が来ないのかとも思いましたが、
さすがに7月後半になってきますと、
夏の太陽が顔を出します。
お日様で「干す」から、「梅干し」なんだそうです。
母から教えられました。
我が家では、3日間お日様で「干す」のだそうです。
先人の知恵は、偉大ですね。
日本人に生まれて良かったと思う瞬間です。(少し大げさ)
おお、小林さん、ごめんなさい。
小林さんは、うちにお手伝いに来てくれる
素敵な女性のかたです。
「おばちゃんを撮ったら、梅干しまずくなるから駄目!」
と言っていましたが、
いえいえ、小林さん そんなことはないですよ。
決して、梅干しはまずくなりません。
お日様と小林さんの愛情で、
きっと おいしくなるはずです。
(写真の左上の両手は、心霊写真ではありません。
うちのばあちゃんです。ニコニコしてました。
なんと、梅干しづくりは楽しいのでしょうか!)
紫蘇っぱも、お日様に干します。
おいしそうですね。
では、最後に 日本の薬草界のゴッドファザー 伊沢一男先生(私の出身大学の偉大な先生)の
「薬草カラー図鑑」より、「梅干し」を紹介して、漢方コラムを終わりにしましょう。
どうも長いコラムをお読みして頂きまして、ありがとうございました。
梅干し(「薬草カラー図鑑」13ページのウメより)
完熟一歩手前の青梅を塩で漬け、
日干ししてからシソの葉で漬け、
また日干しで仕上げるが、
日本人の考えついた独特の漬け物の一つ。
中国の梅干(メイガス)というのは、
日本の梅干しとは違って、
ウメをひか火で焼いたもの。
また漬梅(ズメイ)は塩漬けして日干しにするまでは日本と同じだが、
干したものを甘草水に漬けてから干し上げたもの。
日本特産梅干しは食品、薬用と幅広い用途がある。
中でもピカ一は 日の丸弁当であろう。
薬用と用い方
かぜに
梅干し1〜2個をガス火で金網にのせ、
黒くなるまで焼き、
熱いうちに茶わんに入れて熱湯を注ぐ。
シュウと音を立てて梅干しがくずれるが、
これを湯ごと飲む。
烏梅ならば、水洗いして1〜2個を水200ccで半量ほどにせんじて、
熱いうちに飲むとよい。
疲労回復・健康保持に
梅干しに含まれるクエン酸によるので、
1日1回食べるとよい。
梅酒も疲労や暑気あたりを防ぐので、
大人1日1回30ccを限度として服用するとよい。