天高く馬肥ゆる秋カリンガマ

01/10/28



「秋に見つけた チョウチョウ」
場所:山形県大石田(おおいしだ)
撮影日:2001年10月21日
撮影者:土屋幸太郎


最近は、とくに 9月11日以降は、テレビや新聞、ラジオなど
「テロ」から始まって、「戦争」「難民」「空爆」「炭素菌」「不景気」「リストラ」など、気持ちが暗くなってしまう話題ばかりです。


この私でさえも、難民の人たちが ワーっと投石をしていたり、
戦車や 銃をかまえる戦士、空爆されてモクモクと煙が空に立ち込める映像を見ると 
胸が ドキドキしてしまいます。

夕飯を食べているときに、テレビの画面いっぱいに 「炭素菌」の気持ち悪い画像がでると、
食欲もなくなりそうです。

この前、お客様と その話題をしたら、やはり 私と同じ気持ちで


「テレビのニュースは、怖いので見ません」

「そうですねえ、バラエティが一番ですね」


そのようなわけで、なるべく映画やビデオを見ようと、心がけています。

ましてや、小さなお子様がいる家庭では、教育上 良くないと思うのです。






2001年10月21日撮影 「大石田の秋空

天高く馬肥ゆる秋

秋は、空が高くて 気持ちいいですね。
中国でも、同じような言葉あるそうです。


このような世の中では、どうしたら良いか?

忙しい毎日のストレスを解消するには、どうしたら良いか?


私の場合は、一つの方法として、やはり 自然と親しむことです。


今回の画像は、先週の日曜日に 大石田(おおいしだ)という 最上川沿いの町で撮影していますが、
それはもう、ポカポカとお日様が射し、気分も穏やかな 良い日和でした。

秋は、収穫の秋でもあり、まるで冬を目の前にしての、
自然の一年間を通しての 「総決算」みたいですね。


今回の漢方コラムは、私と一緒に 「小さい秋」 、「天高く馬肥ゆる秋」を見つけに行きませんか?





「民家に生えている柿の巨木」
残念ながら、我が家には 柿の木がありませんので、
車を走らせながら、皆様のおうちのを見るたび、
自然の色彩って素晴らしいなあ と思います。

この時期のドライブは、この柿の色が楽しいんですよね、
皆様は、柿を食べてますか?

オレンジカラーの秋なんだなあ

昨年の漢方コラム 「」でも、取り上げましたが、再び一句


わか庭の柿の葉硬くなりにけり 土用の風の吹く音聞けは 島木赤彦
(アララギ派の歌人)




柿の木を見ながら、車を左に走らせます。

車の中では、山下達郎の日曜日のFM番組 「サンデー・ソングブック」 で、
ご機嫌な 達郎秘蔵の過去のライブを放送しています。

達郎さんは、新曲のためにスタジオに1ヶ月間、こもっているそうです。

私は 日本のポップス界を代表する 偉大なアーティストとして、いつも尊敬しています。


私は 中学生時代は、「FMレコパル」を買いつつ FM番組を 「エアチェック」する
当時としては、正しい 中学生の王道を歩んでいました。

あの頃の思い出は、
@達郎さんの「パレード」を聞いて、衝撃を受けた。

A同じく 達郎さんと伊藤銀治さん、佐野元春さんの三人が参加している
「ナイガラ・トライアングル」を聞いて感動したこと。

B佐野元春さんの 「Happy Man」がラジオから流れてきたとき、日本人が歌っているとは思えなかったこと。

などですね。(同年代の読者の皆様は、ウンウンと分かってくれることと信じています(^o^)丿)


さて、車のラジオから流れる 「ターナーの機関車」を聞き、
私も一緒に 「こ〜〜んな世の中で〜は〜〜、あ〜〜いは 見つからない〜」と歌いながら
最上川沿いの道路を走り抜けていたら 発見しました!


車の車窓から、左に最上川を眺め、何気なしに ふと右側の景色を見渡すと
私の目には 1本の木が 飛び込んできたのです。





カリンの木です。


今年の1月に、20年ぶりの豪雪の中、
漢方コラム第25話 「カリン」として、カリンについて 漢方的な考察をしたものです。

個人的には、とても気に入っているコラムなので、
皆様もお時間がありましたら ご覧ください。


「カリン」 のコラムの内容を一言で説明しますと
近所のお客様夫妻から 頂いた カリンが、なんだか私の目には マルメロのように 見えてきました。

漢方の本などで、いろいろと外見の違いなどを検討したのですが、
だんだんと カリンか マルメロか、分からなくなってしまいました。


しかし、匂いは あくまでも、カリンでしたので、
インターネットで 高度情報社会だと言っているが、
結局は 私たちの五感の一つである 「嗅覚」による 「匂い」で カリンだと分かった。

という内容です。



2000年11月16日撮影 場所 土屋薬局 撮影者 土屋幸太郎


上記の画像は、昨年 当店のお客様 Fご夫妻に頂いたカリンの画像です。


店中に カリンの芳香感が漂います。

言葉では 表現できない。


そうです。


カリンの香り。




2001年10月21日撮影 「大石田の民家に見つけた一年越しのカリン


カリンです。

瓦葺屋根の民家とカリン。

なんて、絵になる光景でしょうか。

こんなところで、君に出会えるとは!

近寄ってみましょう。




秋の太陽をあびながら、一生懸命に成長しているカリン


土屋薬局 中国漢方通信を 地味にやっていて良かった!

これで、読者の皆様にも 昨年 Fご夫妻に頂いたカリンが、
ほんもののカリンだったということが
画像を通して 証明できました。


漢方コラム25話「カリン」の画像と比べてみてください。


どうですか?同じでしょう?


マルメロか カリンかと悩みましたが、
木になっているカリンを見て 分かりました。


F夫妻に頂いたカリンは、
やはり「カリン」でした。





日本晴れの青空に、カリンがなっている。

カリンを撮影している間にも、芳香感が漂う。


私は、昨年のカリンの香りを覚えていましたので、
「あ〜、まったく同じ香りだ」
と感慨に耽ってしまいました。


言葉では、インターネットでは、表現できない 「カリン」の香り。


この香りは 再現できない。


私や その場に居た人たちだけが知っている 思い出。


インターネットだ! 
情報技術革命だ! 

と言っても、違うと思うのです。


今の技術では 再現できるのは
「視覚」 「聴覚」
だけです。

「味覚」 「触覚」 「嗅覚」は、
それぞれ 一人一人の思い出となって
こころに沈殿していくのです。


くらがりに傷つき匂ふくかりんの実 (多佳子)




カリンの木を撮影するために、約1kmさきに車を止めていました。

最上川沿いのS字型の道だし、なかなか駐車できるスペースが なかったからです。


デジカメを首から ぶら下げて、秋の日差しをあびながら
一人 カリンの木を 目指して歩きます。


苦労した甲斐あり、自分の足で歩いていたら、良いことがありました。


皆様に お見せしましょう!




ガマ(蒲)です。ウインナーみたい。


ガマ(ガマ科)は、本来は 池や川縁などに生える多年草です。

茎は 高さ1〜2mにもなりますが、この私が撮影したガマは、
なんと 用水路に生えていました。

道路わきです。

けっして、清らかな 最上川に ガマが生えていたのではありません。

これも、日頃の行いが良いことと、自分の足で歩いたことが良かったのでしょう!


そういえば、ガマといえば、思い浮かびませんか?




因幡(いなば)の白兎(しろうさぎ)伝説

日本は、神々の国だった。

遠い昔の神話の時代。

因幡の国に 一匹の白兎が住んでいました。
ある日、大洪水が起き、白兎は 隠岐島(おきのしま) へ流されてしまい 困っていました。

そんなある日、黒い大きな ワニザメと出会いました。


白兎は、ワニザメを騙して向こう岸に戻ろうと思い
「ワニザメさん、君達の仲間と我々の仲間と、どっちが多いか比べてみようよ」
と言って、向こう岸まで並ばせ 「一匹、二匹、三匹・・・」 と、数えながら ワニザメの背を ぴょんぴょんと 渡って行きました。

もう少しで 白兎が 岸に着くという頃。

白兎が
 浜におりるときに、
「うまいことだまされたな。数はどうでもいい、ただこの浜にもどりたかっただけだ」 と口をすべらせてしまいました。

「君達は騙されたのさ」

さあ、大変です。

怒ったワニザメは、大きな口で 白兎をつかまえ、白い毛を一本残らずむしりとり、
とうとう丸裸にしてしまったのです。

丸裸の白兎が 砂浜で 「痛い、痛いよ〜」と泣いていると、出雲の神様たちが通りがかり わけを聞くと大笑いしました。

「海水でその身を洗い、風に当たってよく乾かし、高い山の頂上で伏せていなさい」

白兎は言われた通りに しましたが、塩水が乾くにつれ、痛みは ますますひどくなるばかりでした。


白兎が 泣いていると、大きな袋を担いだ 大国主の命(ミコト)が通りかかりました。

ミコトは 出雲の神様たちの 一番末の弟で、兄さんたちに荷物を持たされ、遅れていました。

ミコトは、泣いている兎にわけをたずねました。

兎は、今までのことを全部話ました。

ミコトは言いました。

「まず、きれいな池の水で体をよく洗いなさい。
すっかり塩気を落としたら、ガマの穂を敷き散らして、その上をころげるのだ。
そうしてガマの穂を体にまぶしたら、風のないところで静かに寝ているがよい。きっともとのようになれるぞ!」


その通りにすると、やがて傷は治り、白兎はどんどん元の白毛に戻りったとさ。



因幡(いなば)の白兎の神話は、海辺で傷ついた白兎を 大国主命(おおのくにのみこと)が、
その頃 いたるところに生えていた ガマの蒲綿(花粉)で手当てするお話です。

この話は、古事記に記されたお話でありますが、わが国で文献に現われた最初の 「くすり」なのです。


さあ、長くなってしまいましたが、
最後に 日本漢方の大家 大塚敬節先生の 「漢方と民間薬百科」より、ガマを紹介しましょう!

(大塚先生、いつもありがとうございます)



ガマ 


別名 香蒲(こうほ) ヒラガマ ミスクサ

▲ ガンバ(山形) ネコノオ(奈良) ガマ類を、カバ(千葉)

薬用部位 花粉

薬効

陰嚢(いんのう)のかゆみやただれ 脱肛 切り傷 すりむき やけど 歯ぐきからの出血 口内炎 脱毛 血尿 帯下(こしけ)

使用法

1 陰嚢のかゆみやただれ

陰嚢が湿って、かゆく、皮がむけたりするときには、花粉を3、4回振りかけるとよくなる。

2 脱肛 痔

花粉をラードでねり、膏薬(こうやく)として、痔にぬったり、肛門にさしこんだりすると効がある。

これは、ある漢方医の秘法であったとのこと。

3 切り傷 すりむき やけど

軽くいってから つけると、出血をとめ、痛みをなおし、傷を早くなおす効がある。

4 歯ぐきからの出血 口内炎

歯ぐきからの出血や舌や口中のただれには、花粉をつけると効がある。

ガマの花粉と、その四分の一量の辰砂(しんしゃ)をまぜたものを 和口散(わこうさん)と呼び、口中病いっさいの妙薬としている。

5 脱毛

病後に髪の抜けるのには、花粉を黒焼きにして患部にすりこむ。

6 血尿


尿道炎や尿路の結石のため、尿の出が悪く、排尿時に痛んだり、血尿が出たりするものには、ガマの花粉と滑石の粉末とを等分にまぜた 蒲灰散(ほかいさん)を、1回2gずつ、1日3回飲む。

7 帯下

婦人病で、こしけのとまらないものには、花粉をいり、それと等量の雲母(うんも)を いって加え、1回に2〜3gを飲む。




最上川とセイタカアワダチソウ(背高泡立草)

我が家にも、セイタカアワダチソウが生えていました。

秋の日差しをあびながら、蜂たちがおいしいそうに、
花粉を吸っているんですよね。

自然って、やさしいですね。





世界は、戦争している。

だけど、ここは なんて平和なんでしょう。

乾いた 岩だらけの大地にも、お花が いっぱい咲けば 平和になるかなあ。


セイダカアワダチソウを しばらくボーっと見上げていたら、
大空に グライダーみたいのが飛んでいた。