三階滝シシウド

素晴らしき独歩丸の世界

03/09/25
(写真を撮影したのは、9月13日です)


山形県長井市のあやめ温泉をちょうど目の前にしたところから、
左側に向けて林道が山道となって抜けていきます。
(熊谷温泉さま、ありがとうございます)


最近、林道も面白いと思っていますので、
いたずら心から車を走らせていきました。


ちょうど、この日(2003年9月13日)は赤湯温泉でお祭りがあり、
午後4時には村山駅前を神輿のメンバーともに、
バスで出発する予定でした。

午前中の時間が余っていましたので、
温泉めぐりでもしよう思い、
県南の温泉から順繰りに湯めぐりし、
帰り道にあやめ温泉を選んだのでした。


あやめ温泉の場所は、なんでこんな田舎に?
という素敵な場所にありました。


さて、あやめ温泉から左に入ったところの林道は、
あまり危険な目に逢うこともなく、
程よく整備されていました。

この林道に入ったもう1つの理由として「三階滝」という
看板が入り口にあったからです。

あまり人が訪れないようなところの滝もひっそりとしていて、
さぞ趣があるのだろうと密やかな期待を持ちました。


ときどき、曲がり道沿いに「三階滝」という道案内の看板がでていて、
なかなか親切です。


どうでしょう、時間にして15分くらいでしょうか。


三階滝付近と思われる林道近くの場所に、
ちょうど車が1台停車しています。


2台置けるスペースでしたので、私も隣に車を置きました。
林道から右に階段を下っていくと、ゴーっという音が聞こえてきて、
三階滝が見えてきました。






「しばらくは瀧に篭るや夏の初め」 芭蕉

 「奥の細道 日光山」の段より。
この句は、実際には芭蕉が日光の「裏見の滝」を読んだもの。



三階滝の前には、脚立を置いて熱心に撮影しているおじさんがいます。


人っ子一人いないようなところでは、先客がいると妙なもので、
ついつい遠慮してしまいます。

撮影の邪魔にならないように、私も三階滝を見上げます。


「三階」の高さの「滝」か、「滝」が「三段」に分かれるのが名前の由来かな?
と思いながら、しばし見つめていました。


天然の、自然の力は偉大です。




神社で参拝した後、湧き水を発見しましたので、
飲んでみました。

実に、うまいと思いました。

ひんやりとして、味は最高です。

体に染み渡っていきます。


「登り来て湧き出る水の腹にしむ 不動尊祀らる三階の滝」



「長井市西部の長井あやめ温泉桜湯からさらに林道を1.6キロ進むと、
ひっそりとした場所に三階滝はある。

名称は不動滝だが、三段になって水が落ちる様子から、
いつしか三階滝と呼ばれるようになった。

水しぶきが木漏れ日できらめき、「ドー」という滝の音に濃い緑が際立つ静かな場所だ。

その昔は修行の場だったという。

朝日連峰、祝瓶山、三淵などに向かう道が通っていたことから、
行者たちが滝に打たれ、身も心も清めてから向かったと伝わっている。

当時は落差20メートルで滝つぼもあったが、
洪水などで埋まり、現在の落差は15メートルほどだ。

観光地化されていない手付かずの滝を保存し、伝えていこうと、
1990年には住民たちが保存会(菅野芳明会長)を結成し、
滝の近くに三階滝神社を建立した。

毎年8月末には、水の恵みなどを祈願する例祭が行われ、住民たちの信仰を集めている。 」

山形新聞2001年掲載「涼」より、引用させて頂きました。
山形新聞さん、いつもありがとうございます。)






三階滝を見てすっかりと満足した私は、
そこから再び林道へと戻り、もう少し散策してみることにしました。


やがて道は行き止まり、どうやら「三階滝」の上は、
ダムになっていることが判明したのですが、
草木が多い茂り、それ以上は進むことができませんでした。


そこで、私の目に留まったものは。



シシウドです。

最初は、なんだか分からないものでしたので、
面白半分にパシャパシャデジカメで撮影しただけでした。

帰ってきてから、いろいろな薬草の本を読んで同定したのですが、
この写真は、シシウドで間違いありません。


シシウドの花は、まるで「花火」が上ったようですね。

またしても自然の神秘を感じてしまいました。


シシウドは、ミヤマシシウドなどの種類もありますので、
同定に悩みましたが、最終的には、


@花火型の規則正しい花序である Aチョウの幼虫やカメムシが付いている

この2つを理由として、シシウドと分かりました。


昆虫ファンには、シシウドには たくさん虫がいるのでお馴染みなのだそうです。。





奥が深いぜ、生薬と昆虫の世界。


では最後に、伊沢一男先生(私の出身大学の偉大な先生)の「薬草カラー図鑑」より、
「シシウド」と間違えやすく混同しがちな 「ウド」を紹介して、漢方コラムを終わりにしましょう!





◎シシウド (セリ科)


発汗、解熱、頭痛、リウマチ、冷え症に。

大型の多年草で、山地のやや湿ったところに生える。

茎は中空の円柱形で、高さ1〜2m。

葉や茎の上部に細毛があり、ざらつく。

白色小花を多数、傘型につけるのは8月。


薬用部分・根

採取時期・11月


◎シシウド(セリ科) 生薬名 独活(どっかつ)
 

滋賀県にある伊吹山の山小屋では、「伊吹百草」と名づけたものを売っている。

中身を見ると、シシウドの地上部を刻んだものと、ヨモギがまじっている。

たぶん昔は、トウキや、シシウドの根を用いていたのだろう。

この 「伊吹百草」は、布袋に入れてふろにたてる薬湯料で、
神経痛やリウマチ、冷え性などによいと効能書きがあった。

昔はかなり売れたということだ。


ふろにつけてよい香りがするのが、このシシウドである。

本来薬用にするのは、地上部ではなく、根のほうだから、
「伊吹百草」は、残りの地上部をうまく利用していることになる。


シシウドが生えているのを見つけたら、根を掘り取り、
葉も捨てずに利用すべきである。

シシウドの代用品としては、よくウドの根が市販されているが、
ウドはウコギ科の植物だから、シシウドと全く異質のものである。



採取時期と調製法


根は秋に掘り取り、水洗いしてから縦割りにして、
まず、風邪通しの良い所で陰干しにする。

ほとんど乾し上がったころに、数時間だけ日光に当てて、仕上げの乾燥をする。


成分

精油分を含み、この中にグラブララクトンやアンゲリカル。

クマリン誘導体のウンベリフェロン、ベルガプテン。

脂肪油はパルミチン酸などを含んでいる。

精油には皮膚を刺激して血行を促進し、解熱を行う作用がある。


薬効と用い方


○発汗・解熱・頭痛に

よく乾燥した根(独活)20gを1日量としてせんじ、3回に分けて服用する。


○リウマチ・神経痛・冷え性に

乾燥した根300gを木綿の袋に詰めて、水のうちから風呂に入れて沸かし、
この薬湯に全身をゆっくり浸して入浴する。





◎ウド(ウコギ科)


頭痛、めまい、歯痛に


江戸時代に書かれた「本朝食鑑」によれば、
ウドは「高さ4〜5尺あるいは、7〜8尺より1丈余り伸びたときは、食べてはいけない」と記してある。


「ウドの大木」というが、薬効から考えると、「大木」のほうがよい。


薬用部分・根茎

採取時期・秋


◎ウド(ウコギ科)


「吉野椀 短冊独活に桜鯛」

晩春から初夏の季節感にあふれるこの川柳。

黒塗りの上に朱うるしで花鳥をあしらった吉野塗のおわん、
ふたをとるとウドの香りが鼻をつくというものだが、
独活と書いてウドと読ませている。


また多くの本草書にも、この字のほかに土当帰を使っているが、
現在では、これは誤りであるとされている。



独活はセリ科のシシウドと、中国産のハナウドの一種の根とされており、
いずれもウコギ科ではない。

セリ科の多年草の根である。

いまのところ、ウドの漢字名は、はっきりしていない。



◎食用のウド

ウドは野生が多いが、一般の八百屋の店頭に出るのは、温度25度ぐらいの室で軟化栽培したもの。

野生も栽培種もウドに変わりはない。

「本朝食鑑」には、「高さ4〜5尺、あるいは7〜8尺より1丈余り伸びた時は食べてはいけない」ということもあろう。

ウドは香気と歯ざわりにその生命がある。

新鮮なものの皮をむき、適当に切って塩少量加えた水でアク抜きしてから
酢の物や塩をつけて生でたべるのが最高。


調整法
 
秋に野生のウドの根茎を掘り取り、水荒いしてから、薄く切片状にして、初め3〜4日は日干し。

そのあとで風通しのよい所で陰干しして、乾燥させる。


成分

ジテルペンアルデヒドのほかアミノ酸、タンニンなど。


薬効と用い方

頭痛・めまい・歯痛に

よく乾燥した根茎を1日15g、水400ccで半量にまでせんじて、1日3回に分けて服用する。

食前、食後どちらに飲んでもよい。




私も今まで勘違いしていたのですが、
私が愛する漢方薬 「独歩丸(どっぽがん)」の主薬の「独活(どっかつ)」は、「ウドの根っこ」ではありませんでした。


「独活(どっかつ)」は、「ウドの大木の根っこ」ではなくて、
「シシウド」の「根っこ」なのです。

きっと漢方関係者も、知らないで、
独活は、「ウドの根っこ」だ〜と思っているのに違いありません。


独歩丸は、原典名は、「独活寄生湯(どっかつきせいとう)」です。


このようなきれいな花の根っこが、独活(どっかつ)と言われ、
痛みやしびれ、リウマチなどに効くと思うと感激ですし、
偶然にも たまたま長井の山の中でシシウドを見かけたのは、
これはもう 漢方の神様に、いや独歩丸の神様に呼ばれたとしか思えません。


私は、これで独歩丸(独活寄生湯)への愛が深まりました。


本当に昔の人たちは偉いですね。

自然の薬草など、何でも試して飲んでみて、薬効を調べていったのですね。








04/05/28 追記です。

独歩丸(独活寄生湯)のもう一つの主成分である
ヤドリギの撮影に成功しました!

十和田湖、六甲田、湯段でのヤドリギ(桑寄生)もお楽しみください。

漢方コラム第62話 「ヤドリギ(桑寄生)…ヤドリギの下で甘いキスを〜

幸せを呼ぶコラムかもしれません。





04/08/13 追記です。

八幡平(岩手県)のアスピーテラインから、秋田県に抜けるときに、
可憐なシシウドを見かけました。

澄み切った青空に、きれいに咲いていました。