碇ヶ関の猫柳

04/03/28


温泉ファンである私は、長年憧れていました 青森県碇ケ関(いかりがさき)―湯の沢温泉郷に宿泊してきました。

宿泊したところは、「なりや温泉」さんです。


クリームのような白濁した硫黄泉で、舐めると塩味がします。

浴室には、ガス臭も充満していまして、お湯の濃さでは ピカイチ級でした。


津軽湯の沢温泉郷は、秋元温泉も、湯の沢山荘も とっても素晴らしい温泉でした。

日本で このように素晴らしい温泉地は、なかなか探せないのではないでしょうか?

国道7号線から、舗装の悪い道を右側に進んでいきますと
食堂も何も無い、ただ3軒の温泉宿があるだけです。


心と体の洗濯にも、お勧めです。


このコラムは、なりや温泉から弘前城を観光して帰宅したばかりの
興奮冷めやならぬ状態で 自宅でパソコンに向かいまして、
文章を作成しているのですが、
なんだか 夢のような世界から、厳しい現実社会に戻ったような気分です。


「あんた、どっから来たのかい?」

「山形からです」

「それは、遠くから来たね〜」

「ここの温泉はサ、カラダに染み込むんだよね」

「あんた、どっか体でも悪いのかい?」

「いえ、温泉が好きなんです。
知り合いの人が、なりや、なりやは最高だと言っていたんです」

「ははは、そうか、じゃ、どんどん紹介してね。
ここの温泉さ、はいってたら、病気なんか治るし、
体全体の調子が良くなるから、風邪もひかなくなるんだ」





本当に、湯治の世界はあると思います。

最近の公共施設は、レジオネラ菌騒ぎで、
循環ろ過・無色透明無味の それだったら温泉が可哀相なので、
地中で眠らせてあげたらの施設も多くなってきているのですが、
津軽湯の沢温泉郷は それとは段違いのハイレベルの温泉地でした。


今朝、宿の前を流れる川のせせらぎの音と、
部屋に立ち込める硫黄臭、そして なりやの朝風呂に入らずに
津軽の温泉めぐりをしてしまって 「あー!しまった!俺って馬鹿」という夢のトリプル攻撃で、
ハッと目が覚めました。

目を覚ましまして、どっから硫黄の匂いが漂っているんだと思ったら、
自分の体から 強烈に匂っていたのでした。

その話を、今日の最後のなりやの朝風呂で、
地元のおじさんに喋ったら、
「ははは。それは最高だな。あんた、昨日泊まったのかい?」
と笑われてしまいました。




昨日の夜に、なりやさんは 夜の9時半にガスが止まるので、
暖房も効かずに 部屋の中が寒くなりましたので、
ならば温泉で温まるしかない!とのことで、
その日 4度目のお風呂に行ったのですが、
そこで管理人さんの部屋の前に飾ってあったのは、
猫柳(ネコヤナギ)」だったのです。


「あのう、この猫柳素敵ですね。
昨日、ここに来る途中に猫柳を探したのですが、
ぜんぜん見つからなかったんです」

「橋、越えたところに、右側にあるよ」

「猫柳って、本当に見つけるのが難しいですよね」


なりやさんの猫柳は、それはそれは、
私の目には、「春が来た喜び」「自然の美」そして
猫柳を飾るなりやさんの感性を感じ取れました。


宿を午前10時にきちんとチェックアウトして(ある意味、ギリギリまで粘るとも言う)、
車をゆっくりと走らせていた私の目には、昨日とは打って違いまして、
猫柳が飛び込んできたのでした。

(このページは、「漢方コラム」で、起承転結の「転」の部分が、
薬草の漢方的な解説になるのですが、
昨年の漢方コラムの「猫柳(ネコヤナギ)」で薬効を解説しております。
ですので、横着かもしれませんが、今回のコラムでは猫柳の薬効は省略致します)








今日のニュースで、東京の上野公園の桜
20何万人の人が花見に行ったとありました。

東京は桜が咲いて春を実感しているときに、
猫柳と ここ津軽の碇ヶ関の湯の沢温泉郷で
昨年の山刀峠(なたぎりとうげ)の猫柳以来 1年ぶりに再開できるとは、
私は すごく幸せだと思いました。

雪国で、そうですね、桜のお祭り気分の浮かれさわぎよりも、
猫柳を宿に飾っていた なりやの女将さんの気持ちのほうが、
素敵だと思うのです。





猫柳は、清らかな川沿いにあります。

早春の代名詞ですね。

川のせせらぎの音が聞こえるでしょう?






「私にも 春をおくれ 猫柳」 幸太郎




「峠越え 我に春呼ぶ 猫柳」 幸太郎




「参勤の 足音聞こゆ 猫柳」 幸太郎






碇ヶ関御関所

津軽藩祖・津軽為信公が天正14年(1856年)秋田比内の浅利氏を攻め、
大浦城に帰陣するとき、この地に関所を設けたのがはじまり。

その後明治4年の廃止まで、江戸参勤の津軽藩の表舞台として偉容を誇っており、
江戸時代には、防備より警備の役割を果たした。


近くにある「歴史の道」の羽州街道は、
天正14年から明治25年まで利用されていた。

伊能忠敬や吉田松陰、
イザベラバードらも通った
まさに歴史の道である。





ふきのとうが芽吹きます。

私が 雪の上を悪戦苦闘しながら、
猫柳を撮影しているときに、
地元の人たちは 車を止めて、
ふきのとうを
さんざん採っていました。




「やわらかき 陽光そそぐ 猫柳」 幸太郎




「碇ケ関の関所を越えました!
これからは 青森がんばります」

「ははは、あんた、仕事しているの?
ゴールデンウイークとか、
温泉めぐりは いいべ。
泊まりは、車の中ですればいいんだからな」


天城越えならぬ、
碇ヶ関越えを果たして、
興奮冷めやらぬレポートでした。





04/04/20追記

一昨日の18日に、ホームとは言えないものの、
また碇ヶ関に来てしまいました。

碇ケ関の湯の沢温泉郷のなりやや秋元の魔力が私を呼ぶのでしょうか?


先月の3月までは冬季休業であった碇ヶ関御関所が開いていましたので、
ふらりと訪れて、観光しました。

江戸時代の古地図を見ていて発見したのですが、
津軽藩の関所であった碇ヶ関と、
私の住んでいる神町(じんまち)は、
なんと羽州街道でつながっているではないですか!
(芭蕉庵ドットコム様ありがとうございます)


羽州街道は 秋田の佐竹の殿様や、津軽の殿様も参勤交代で通った由緒ある街道です。

芭蕉も本来は、青森を目指そうとしたのですが、
自分の健康に不安を感じていたので、
岩手県の平泉から後ろ髪を引かれる思いで、
山刀峠(なたぎりとうげ)を盗賊に襲われる危険に身をさらしながら、
尾花沢の清風宅を目指したのです。


芭蕉も、もっと体力に自信があったのならば、
曽良と一緒に 碇ケ関を訪れていたのかもしれませんね。


さて、碇ケ関で私が1ヶ月ぶりに目にした猫柳は、
山の景色を緑に変えていました。



04/04/18撮影 場所 碇ケ関





芭蕉の代わりに一句詠ませて頂きます。

「雪解けや 緑に萌(も)ゆる 猫柳」 幸太郎

「翁も 見たかや 猫柳」 幸太郎




なりやさんの猫柳も、先月に泊まりに行ったときの銀色から
緑に芽吹いていたんですよね。

弘前では、桜祭りで大勢の人で賑わっていますが、
ひっそりと峠では、春の喜びを 猫柳が奏でていたのです。








04/04/28追記


深夜に眠る午前1時過ぎに、パソコンに向かい、
「津軽碇ケ関峠越え春を呼び込む猫柳シリーズ」の最終章に取り掛かっています。


今日も二日連続で、セントラルのプールでスッキリと泳いで、
いつもの歯医者さんと顔を合わせ、
「先生は、帰ってからすぐに寝るのですか?」と聞いたところ、
「僕は、帰ってから ゆっくりしているので、大体寝るのは1時過ぎですね」
という会話をして別れたのですが、
実際に私も午前様となっています。

帰宅してから、今週のNHK衛星の12時からの特集は、
海外ロックライブ特集で、
昨夜は なんと 世界一の「RADIOHEAD」のライブ番組で、
トム・ヨークの神経質な目つきと歌声に感動したばかりです。

今日は、「アブリルラビーンとサラ・マクラクラン」という
カナダが生んだ世界の歌姫特集で、
私も好きで愛聴している人たちでしたから、
うっとりと聞き惚れていました。


とくにサラ・マクラクランは素晴らしいです。


美しさも、歌声も、笑顔も、愛情も世界一かもしれません。


なので、私も感情的な心地良い感じになっていまして、
「そうだ、数日前に宿泊した 碇ヶ関の雪が積もった猫柳をアップしよう!」
と思った次第です。

(ですから、勢いだけでこの文章を作成していますので、
誤字脱字、意味不明なことがあるかもしれませんが、
少々許してくださいね)


津軽碇ケ関に今回宿泊した理由は、
本州最北の下北半島の下風呂温泉「長谷旅館」を目指したからです。


私の家から、約800キロの走行距離ですから、
もう日帰りは無理なところですので、
途中の青森県の秘密基地として、
またまた 「なりや」さんに泊めてもらったのでした。


そのうちに、機会がありまして、実現できましたら、
井上靖先生の名作の「海峡」の最終の舞台となった「長谷旅館」に宿泊した感想や、
「海峡」を読破した感想と、
そして 私が体験した津軽海峡を
「無名コラム」として登場させたいと思っています。


楽しみにしていてくださいね。

(04/06/08: 無名コラム「私の一冊 海峡」でアップしました)

さて、山形でも雪が降ったという2004年4月26日の
碇ケ関の模様です。




2004年4月26日 青森県碇ケ関

朝に寒くて目を覚ましたら、午前4時でした。

冷え切った体は、温泉で温めるのが一番です。

なりやさんの第一浴場に入ったところ、
先月もお会いした湯治に来ている
おじいちゃんがいました。


「今朝、雪が降ったよ。」


浴室から出て、窓を開けると
久しぶりに見る雪景色です。





「風雪の 重みに耐えよ 猫柳」 幸太郎


春が来て喜んでいても、
自然とは分からないものです。

私たち、東北の人たちは
自然と向き合って生きているのです。

がんばろうね、猫柳。