01/6/26
01年6月17日撮影
場所:山形県東根市神町(ひがしねしじんまち)
撮影者:土屋幸太郎
さくらんぼの収穫のピークも、今週いっぱいくらいで 終えようとしています。
私の住む町は、山形県東根市神町(ひがしねしじんまち)という所ですが、
果樹栽培が とても盛んな地域です。
この場所は、乱川(みだれがわ)という河川の下流に属し、扇状地(せんじょうち)となっているので、
水が沸かず、水はけの良いところなのです。
ですから、お米作りには向いていません。
このトップ画像の写真は、神町(じんまち)の若木(おさなぎ)という地域で撮影したものです。
今は こうして立派な さくらんぼ(佐藤錦)が生(な)るようになりましたが、
昔は 水は 100mも掘って やっと地下水が出るような不便な地域でした。
あたりは、一面の松林で、石がゴロゴロと転がっているような「不毛の地」だったのです。
今の時代は、蛇口をひねれば すぐに水が出ますが、
昔は 水を飲むにも、洗濯するにも、ふろに入るにも、顔を洗うにも とても苦労したそうです。
おふろは、1〜2週間に1回くらいしか、入れないほど 大変だったようです。
さて、ここ若木(おさなぎ)の開拓が決まったのは、昭和10年5月。
昭和12年4月20日には、入植が始まりました。
開拓は、まず松の木を切ります。
その後、残った根を掘り出します。
その当時は、機械などはありませんので、すべて人力で作業を行います。
私たちの先祖は、想像を絶する苦労をしていたのです。
そのような中、満州開拓で 「開拓の親分」と言われた 加藤完治先生が指導に来るなど、
多くの人々の 血と汗と涙の苦労の結晶により、現在の さくらんぼやりんごで有名な果樹園へ姿を変えていったのです。
(漢方コラム 「さくらんぼ」 「井戸を掘った人」 「水が出た日」 「水が出た日2」 「水が出た日3」 「梅」 「桃源郷」
も、時間があるときに、じっくりとお読み頂き、このコラムの参考にして頂ければ 嬉しいです。
さて、故郷愛に燃える 漢方コラム、今回は さくらんぼの生育を追っていきます。
01年4月19日撮影。
場所:若木(おさなぎ)
この画像は、漢方コラム「梅」にも使用しています。
さくらんぼ 佐藤錦のつぼみです。
厳しい豪雪に耐えながらも
一冬を越し、
春の喜びに 身をふるわせます。
01年4月23日撮影。
撮影場所:天童
「ジョセイフィン 虹を夢みて」にある
本物の虹を撮影した後に、この画像を撮りました。
これは、さくらんぼのお花です。
私が 東京で学生生活を始めたばかりの
そうそう、あれは大学一年生のときです。
薬学系の授業は、一年生の一般教養では、
伝統的に 「グーテンタッグ(こんにちわ)」で有名な ドイツ語を勉強します。
ドイツ語というもlのは、名詞に 男性系と女性系、中性系と 三つも分かれ、
しかも 名詞にかかる冠詞が 「デア デス デム デン」と変化していく
とても勉強のしがいのある 外国語です。
「ディイー デアー デアー ディイー」というのもありました(多分)
ところで、その授業で
先生が 何かの拍子に
「さくらんぼは、桜の花だから さくらんぼと言うのです」
と言ってしまったのです。
私は、声を大に上げて、
「せんせーい、何を言っているのですか〜!!
違いま〜す!!」
と言いたかったのですが、恥ずかしくて
山形県出身の チェリーボーイだった私は
とうとう言えませんでした。
01年4月29日撮影
場所:東根市中島新田あたり
「桃源郷」というコラムに 桃の画像を載せましたが、
その時に 一緒に撮影しました。
これも さくらんぼのお花です。
どうですか。
丸くて 白くて ふわふわとした感じで きれいで美しいですね。
桜とは、違うでしょ。
桜は、桜の花が咲きます。
さくらんぼは、さくらんぼの花が咲くのです。
けっして、さくらんぼは、桜の花にはなりません。
そういえば、この前 NHKを見ていたら、
岩手県の人が
「この桜の花が、さくらんぼになると思うと、春が来たことを実感します」
と、おじさん、おばさんたちが、物知り顔で喋っていましたが、
私は、なんと無知な人たちだろうと思いました。
さくらんぼは、食べるばかりではありません。
花見をするのですよ。
さくらんぼの花で。
私たちは、贅沢だなあ。
01年4月29日撮影です。
もちろん、さくらんぼの花のアップです。
いいですか、これは 桜じゃないですよ。
さくらんぼ、さくらんぼでも 「佐藤錦」の花ですよ。
きれいで、可憐(かれん)ですね。
自然の美を感じます。
01年6月17日撮影です。
場所は、営団(えいだん)あたりです。
さくらんぼが、こうやって木になるのです。
東京にいるころは、
「幸ちゃん、さくらんぼって、木に生(な)るの??」
と、毎年 毎年 この季節になると
問い聞かれたものですが、
やっと 証明できました。
蕾(つぼみ)から、お花が咲いて、
ミツバチなどがやってきて 受粉して
こうして 実がなるのです!
私が 子供のころは、
農家の友人の家には よく遊びにいったものです。
すると、茶の間には
デーンと ざるに山盛りとなった さくらんぼが待っています。
ムシャムシャ 飽きるまで食べます。
そうですね。
子供二人で、2kg以上でしょうか?
「人生、楽ありゃ、苦もあるさ〜」と水戸黄門などを見ながら
さくらんぼを ムシャムシャ。モグモグ。
種は、ペッと吐き出します。
一つずつでは、面倒だ。
ほっぺに、おサルのように詰め込んで
さくらんぼをムシャムシャ食べます。
神町小学校の給食でも、
農家の子たちが、さくらんぼを山盛り 家から盛ってきます。
先生も 嬉しそう。
みんなで、給食も さくらんぼをムシャムシャ。
そういう訳で、この季節は、
「さくらんぼを食べ過ぎて、下痢した〜」
と、みんなで叫ぶのです。
さくらんぼを 果実の宝石と呼ぼう!
これは、自然界の芸術と農家の皆様の努力の結晶です!
では、昨年にも 漢方コラム 「さくらんぼ」で、薬膳的な さくらんぼの薬効を考えましたが、
2001年度では、私の大学の先生の本から 紹介していきましょう!
続続 薬草カラー図鑑(星薬科大学名誉教授 井沢一男先生 主婦の友社 昭和59年発行)より。
(主婦の友社さん、井沢先生、ありがとうございます)
サクランボ
Prunus avium L. (英) Cherry, Sweet Cherry (バラ科)
疲労回復(健康薬酒)に
別名… オウトウ、セイヨウミザクラ
薬用部位… 果実
採取時期… 6〜7月
名前の由来
サクランボは 桜ん坊の意味。
花は 一般のサクラに似ていることから、
坊は 赤い宝石のような果実に 愛称の気持ちを込めてつくられた。
桜桃(おうとう)は 中国名で、サクランボに似た シナノミザクラ(中国原産、わが国でも栽培)につけられた漢名。
サクランボは 別名セイヨウミザクラとも呼ぶ。
山形県で多く栽培
わが国には、明治7〜8年に、政府がヨーロッパから多数の品種を輸入したのが始まり。
その後、明治42年(1909)に山形県農事試験場で本格的な栽培が行われるようになり、
山形県での栽培が定着した。
現在 山形県で栽培されるものの大部分は 「ナポレオン」という品種で、全体の7〜8割を占め、
次に 「佐藤錦(さとうにしき)」 「日の出」 「黄玉」とつづく。
5月始めに開花し、果実は6月に入って早生の 「日の出」 次に 「佐藤錦」 「黄玉」が出て、
下旬に 「ナポレオン」が出荷される。
成分
リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸などの有機酸のほか 果糖、ブドウ糖などが含まれている。
薬効と用い方
疲労回復に
サクランボ酒を薬酒に。
サクランボ(品種はどれでもよい) 500gを水洗いして水けをきり、
グラニュー糖 50〜80gを加えて 35度のホワイトリカー 0.9リットルに、3〜6ヶ月漬ける。
1回 30〜50tを限度に飲む。
01年6月17日撮影。
野川付近です(多分)
県外の観光客の皆様は、この時期
山形県にさくらんぼ狩りに来県します。
高速道路や48号線は、さくらんぼのために 渋滞を引き起こします。
道路は、県外ナンバーでいっぱい。
土屋薬局にも、
「埼玉を 朝の3時に出てきたよ〜」 とか、
今日の梅雨の大雨でも!
「山梨から来ました〜」
と、多くの方々が来店されます。
しかも、今日のお客様は この豪雨のなか、
さくらんぼ狩りを楽しんでから!
楯岡(たておか)の バラ公園に行くと言います!
梅雨空にさくらんぼ。
雨が降ると、せっかくの さくらんぼは
実が割れてしまいます。
だから、こうやって ハウスをつくるのです。
私の友人も、村山の大久保に
ハウスつくりの手伝いに行った!
と言っていましたが、
神輿で鍛えているにもかかわず
「こうたろう〜! 足がパンパンだ!」
と、叫んでいました。
さくらんぼは、体力がいるんのです。
さくらんぼを収穫するにも、
2メートルくらいのキャタツに登りますから、
足腰は フラフラです。
腰痛や神経痛、肩こり、五十肩になってしまいます。
(こういう立地で 漢方相談をしていたら、「痛み、しびれの漢方」の実績が日本一になるのですね)
クロネコヤマトさんや佐川さん、ペリカンさんたちも戦争です。
クール宅急便で、全国に出荷ですから、
もう 大変です。
土屋薬局では、毎日 漢方薬を全国にお送りしていますが、
クロネコさんたちは 臨時のバイトさんたちが集荷に来ます。
バイトさんたちが来るたびに
ああ、今年も この季節が巡ってきたなあ〜
と感慨に耽ります。
私は、土日と東京で勉強していましたが、
山形新幹線に乗ると、
乗客の皆様は
両手に さくらんぼ。
銀座を歩いていたら、クロネコさんの車が止まっていたので、
中をのぞくと
さくらんぼ。
え、お店の中は どうかって?
みんな、さくらんぼ だから、
病院も薬局もデパートもスーパーも 暇なのです。
これが農繁期。
ですから、ちょっと高いかもしれませんけど、
実は さくらんぼは、とても手間と人件費と資材が かかっているのです。
それだけ、みなさま、理解してください。
機械では、さくらんぼは収穫できないのですよ。。
人手集めも大変みたいだし。。
さくらんぼで有名なところから、全国の皆様へのメッセージでした。
BY 土屋薬局 中国漢方通信