
薬剤師・認定不妊カウンセラーの土屋幸太郎です。
今回は、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)があり、体外受精で卵巣の反応が思うように得られないというお客様からの漢方相談をご紹介します。
※ご紹介する内容は、個人が特定されないよう一部を変更しています。漢方薬の選び方は、体質や治療経過によって異なります。
PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)による卵巣機能低下でご相談
土曜日の午前中、隣県からお客様が車で3~4時間かけて土屋薬局へお越しくださいました。
事前にメールで漢方相談表をお送りいただき、これまでの不妊治療や体外受精の経過を確認したうえで、直接お話を伺いました。
お悩みは、
「体外受精のときに卵巣がうまく反応しない」
「PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)があり、卵胞が育ちにくい」
ということでした。
これまでの採卵では、採取できた卵は受精し、6~8分割まで進んだ経験がありました。そのため病院からは、採卵できる卵の数や状態が整えば、体外受精で良い結果につながる可能性があると説明されていたそうです。
そこで今回は、病院での不妊治療を続けながら、漢方で身体の状態を整え、卵巣の反応や卵胞発育を支えていく方法を一緒に検討しました。
卵巣機能低下と中医学で考えるPCOS
PCOSは、卵胞がある程度まで育っても排卵しにくく、月経不順や無排卵につながることがあります。
ただし、PCOSと卵巣機能低下は本来同じものではありません。
PCOSでは卵胞の数が多くても、ホルモンバランスの乱れなどによって、一つひとつの卵胞が順調に成熟しにくい場合があります。体外受精では、排卵誘発剤を使用しても卵胞の育ち方にばらつきが出たり、期待した反応が得られなかったりすることもあります。
中医学では、PCOSによる排卵障害や卵胞発育不全の背景を、主に次のような体質から考えます。
- 瘀血(おけつ):血の巡りが滞っている状態
- 痰湿(たんしつ):余分な水分や老廃物が体内にたまっている状態
- 腎虚(じんきょ):生殖や成長を支える力が不足している状態
- 血虚(けっきょ):月経や卵胞の発育を支える血が不足している状態
今回のお客様には、お顔の色や体調、月経周期などを詳しく伺うとともに、舌の状態を確認する「舌診」も行いました。
舌の色はやや薄いピンク色で、白い苔が少し厚めについていました。
中医学では、舌の苔が白く厚い状態は「痰湿」がたまりやすい体質の一つの目安と考えます。また、舌の色が薄い場合には「血虚」の傾向も検討します。
血が不足すると、月経周期や子宮内膜、卵胞発育にも影響しやすいと考えられるため、痰湿を取り除くだけではなく、血を補いながら月経を整えることも大切です。
体外受精で卵の反応を良くするために行った漢方
体外受精に向けた身体づくりでは、中医学の立場から主に次の二つを大切にしています。
- 血を補い、月経周期や子宮内膜を整える「補血・養血調経」
- 生殖を支える力を補い、卵胞発育を支える「補腎」
しかし、PCOSの方では、補血と補腎だけではなく、「痰湿」や「瘀血」への対応が必要な場合があります。
今回のお客様には、体質やこれまでの治療経過、舌の状態などを踏まえ、次の漢方を組み合わせてご提案しました。
- 婦宝当帰膠
- 参茸補血丸
- シベリア霊芝(チャガ)
婦宝当帰膠は、血を補いながら月経周期や女性の身体を整えることを目的に使用します。
参茸補血丸は、気血を補うとともに、中医学でいう「腎」の働きを支える目的で選びました。
さらに今回は、PCOSにみられる痰湿の傾向を考慮し、身体にたまった余分なものへの対策として、シベリア霊芝を組み合わせました。
卵巣機能低下や卵胞発育不全の漢方相談では、単純に「卵巣に良い漢方」を選ぶのではなく、その方に血虚、腎虚、痰湿、瘀血のどの傾向があるのかを見極めることが大切です。
同じPCOSという診断であっても、体格、月経周期、基礎体温、ホルモン値、胃腸の状態、冷え、舌の状態などによって、漢方の組み立ては変わります。
卵巣機能低下を改善する漢方は体質に合わせて
「卵巣機能低下を漢方で改善したい」
「体外受精で卵巣が反応しにくい」
「採卵できる卵が少ない、または卵胞が育ちにくい」
このようなお悩みで相談に来られる方は少なくありません。
漢方は、卵巣そのものを直接若返らせるものではありませんが、月経周期や冷え、血流、胃腸の働き、睡眠、疲労など、妊娠に向けた身体全体のバランスを整えることを目指します。
病院での体外受精や排卵誘発と漢方を併用する場合には、治療内容や使用している薬、採卵・移植の予定なども確認しながら、その時期に合った方法を考えていくことが重要です。
今回のお客様にも、体外受精で卵巣がより良く反応し、採卵から受精、胚発育へとつながっていくことを願いながら、お車を見送りました。
遠方からお越しいただき、本当にありがとうございました。無事にご自宅へ到着されたでしょうか。
焦らず、病院での治療と歩調を合わせながら、一緒に身体づくりを続けていきましょう。
良い結果につながりますことを、心より願っております。
※PCOSや卵巣機能低下の状態、治療方法は一人ひとり異なります。漢方薬や健康食品を使用する際は、現在服用している薬や不妊治療の内容を医師・薬剤師に伝えたうえでご相談ください。
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