
突発性難聴や耳鳴りの漢方相談で、とても多くいただくのが、こんな声です。
「補腎の漢方を飲んでいるのに、なかなか耳鳴りが良くなりません」
「年齢的にも更年期なので、腎が弱っていると言われましたが…」
前回の記事では、更年期と耳鳴りの関係について、中医学の視点から整理しました。
今回はその続きとして、「なぜ補腎だけでは改善しにくいケースがあるのか」についてお話しします。
なぜ「耳鳴り=補腎」と言われるのか
中医学では、「腎は耳に開竅する(じんはみみにひらく)」と考えられています。
そのため、
- 加齢
- 更年期
- 突発性難聴
- 難聴や耳鳴り
といった症状は、**腎精不足(じんせいぶそく)**と結びつけて考えられることが多く、「まずは補腎」という方針が立てられます。
この考え方自体は、決して間違いではありません。
実際に、補腎を中心とした漢方で、症状が落ち着いていく方もいらっしゃいます。
それでも「補腎で効かない」ことがある理由
ただ、臨床の現場では、補腎だけでは改善が難しいケースも少なくありません。
その理由はいくつかあります。
① ストレスによる「肝気鬱結」が強い場合
耳鳴りのご相談では、
- 緊張が抜けない
- 不安感が強い
- イライラしやすい
- 夜や静かな場所で耳鳴りが気になる
といった訴えをよく伺います。
このような場合、**ストレスによる肝気鬱結(かんきうっけつ)**が、強く関わっていることがあります。
この状態では、腎を補っても、気の流れが滞ったままになり、症状が改善しにくいことがあります。
② 気血の巡りが悪い場合
耳鳴りの方に、
- 首や肩のこり
- 頭の重さ
- 冷え
- 手足の血行不良
が重なっているケースもよく見られます。
この場合は、気血の巡りが十分でない状態です。
腎を補っても、「巡らせる力」が不足していると、耳まで十分に届かないことがあります。
③ 痰湿・水の停滞が関係している場合
- むくみやすい
- 天候で症状が変わる
- 頭が重い
- めまいを伴う
こうした場合は、痰湿(たんしつ)や水の停滞が耳鳴りに影響していることがあります。
このタイプでは、補腎よりも先に、体の中の余分なものをさばく視点が必要になることもあります。
漢方相談で大切にしている考え方
耳鳴りがあるからといって、すぐに「補腎一択」と決めてしまうのではなく、
- いつから症状が出たのか
- 発症のきっかけ
- 睡眠や生活リズム
- 冷えやストレスの有無
- 耳鼻科での治療経過
こうした背景を一緒に整理しながら、今の体の状態に合った整え方を考えていきます。
耳鳴りは、耳だけの問題ではなく、体全体のバランスの乱れとして現れることも少なくありません。
寒冷地での相談経験から
山形という寒冷地で、冷えや血流、自律神経の乱れに関するご相談を多く受けてきました。
耳鳴りや突発性難聴も、冷えや緊張、巡りの悪さと無関係ではないと感じています。
だからこそ、症状だけを見るのではなく、体の土台から整える視点を大切にしています。
まとめ
- 耳鳴りに対して「補腎」は大切な考え方
- ただし、補腎だけで改善しない理由がある
- ストレス・巡り・冷え・水の停滞などを含めて考えることが重要
同じ「耳鳴り」でも、体の状態は一人ひとり異なります。
もし、補腎の漢方を使ってもなかなか変化を感じられない場合は、視点を少し変えることで道が見えてくることもあります。
※突発性難聴や耳鳴りは、早期の耳鼻科受診が重要です。
必ず医療機関での治療と並行しながらご相談ください。
前回は
「更年期と耳鳴りの関係|突発性難聴だけではない体の変化と漢方の考え方🍒」
をお届けしました。
次回は
「耳鳴りの漢方相談で大切にしていること|症状より“発症のきっかけ”を聴く理由」
について書く予定です。
耳鳴りのご相談で、私がまず大切にしていること。
その視点をお伝えします。
どうぞお楽しみに🍒











