【第2回】耳鳴りに補腎が効かない理由|更年期・突発性難聴と漢方の考え方

更年期と漢方ケア耳鳴り・耳の詰まりと漢方ケア

2026年2月28日

更年期の耳鳴りについて漢方相談を受ける女性と、体の変化やストレス要因を丁寧に聴く薬剤師のイラスト

突発性難聴や耳鳴りの漢方相談で、とても多くいただくのが、こんな声です。

「補腎の漢方を飲んでいるのに、なかなか耳鳴りが良くなりません」
「年齢的にも更年期なので、腎が弱っていると言われましたが…」

前回の記事では、更年期と耳鳴りの関係について、中医学の視点から整理しました。

今回はその続きとして、「なぜ補腎だけでは改善しにくいケースがあるのか」についてお話しします。


なぜ「耳鳴り=補腎」と言われるのか

中医学では、「腎は耳に開竅する(じんはみみにひらく)」と考えられています。

そのため、

  • 加齢
  • 更年期
  • 突発性難聴
  • 難聴や耳鳴り

といった症状は、**腎精不足(じんせいぶそく)**と結びつけて考えられることが多く、「まずは補腎」という方針が立てられます。

この考え方自体は、決して間違いではありません。

実際に、補腎を中心とした漢方で、症状が落ち着いていく方もいらっしゃいます。


それでも「補腎で効かない」ことがある理由

ただ、臨床の現場では、補腎だけでは改善が難しいケースも少なくありません。

その理由はいくつかあります。


① ストレスによる「肝気鬱結」が強い場合

耳鳴りのご相談では、

  • 緊張が抜けない
  • 不安感が強い
  • イライラしやすい
  • 夜や静かな場所で耳鳴りが気になる

といった訴えをよく伺います。

このような場合、**ストレスによる肝気鬱結(かんきうっけつ)**が、強く関わっていることがあります。

この状態では、腎を補っても、気の流れが滞ったままになり、症状が改善しにくいことがあります。


② 気血の巡りが悪い場合

耳鳴りの方に、

  • 首や肩のこり
  • 頭の重さ
  • 冷え
  • 手足の血行不良

が重なっているケースもよく見られます。

この場合は、気血の巡りが十分でない状態です。

腎を補っても、「巡らせる力」が不足していると、耳まで十分に届かないことがあります。


③ 痰湿・水の停滞が関係している場合

  • むくみやすい
  • 天候で症状が変わる
  • 頭が重い
  • めまいを伴う

こうした場合は、痰湿(たんしつ)や水の停滞が耳鳴りに影響していることがあります。

このタイプでは、補腎よりも先に、体の中の余分なものをさばく視点が必要になることもあります。


漢方相談で大切にしている考え方

耳鳴りがあるからといって、すぐに「補腎一択」と決めてしまうのではなく、

  • いつから症状が出たのか
  • 発症のきっかけ
  • 睡眠や生活リズム
  • 冷えやストレスの有無
  • 耳鼻科での治療経過

こうした背景を一緒に整理しながら、今の体の状態に合った整え方を考えていきます。

耳鳴りは、耳だけの問題ではなく、体全体のバランスの乱れとして現れることも少なくありません。


寒冷地での相談経験から

山形という寒冷地で、冷えや血流、自律神経の乱れに関するご相談を多く受けてきました。

耳鳴りや突発性難聴も、冷えや緊張、巡りの悪さと無関係ではないと感じています。

だからこそ、症状だけを見るのではなく、体の土台から整える視点を大切にしています。


まとめ

  • 耳鳴りに対して「補腎」は大切な考え方
  • ただし、補腎だけで改善しない理由がある
  • ストレス・巡り・冷え・水の停滞などを含めて考えることが重要

同じ「耳鳴り」でも、体の状態は一人ひとり異なります。

もし、補腎の漢方を使ってもなかなか変化を感じられない場合は、視点を少し変えることで道が見えてくることもあります。

※突発性難聴や耳鳴りは、早期の耳鼻科受診が重要です。
必ず医療機関での治療と並行しながらご相談ください。

前回は
更年期と耳鳴りの関係|突発性難聴だけではない体の変化と漢方の考え方🍒
をお届けしました。

次回は
「耳鳴りの漢方相談で大切にしていること|症状より“発症のきっかけ”を聴く理由」
について書く予定です。

耳鳴りのご相談で、私がまず大切にしていること。
その視点をお伝えします。

どうぞお楽しみに🍒