昨日、東京一ツ橋の日本教育会館「一ツ橋ホール」で日本中医薬研究会主催のオープン講座に参加してきました。
前回の日本不妊カウンセリング学会主催の学術集会も一ツ橋ホールでしたので、隔週での上京となりました。

生殖医療専門医の朱丞華先生による「生殖遺伝と着床前診断」の講義。最新の生殖医療について学んできました。
中医婦人科不妊症専門講座オープンセミナー
2026年6月7日(日)
【講義内容】
第1部 9:30~10:50(質疑応答20分含む)
「生殖遺伝と着床前診断」
日本専門医機構認定産婦人科専門医
日本生殖医学会生殖医療専門医
朱 丞華(シュ ショウカ)先生
第2部 11:00~12:00(質疑応答10分含む)
「漢方薬局における不妊相談について」
日本中医薬研究会会長
猪越英明先生
先日は男性不妊について学びましたが、今回は生殖遺伝や着床前診断について学んできました。
午後の部は、7月5日のリンクむらやまでの妊活セミナーに特別ゲストとしてお招きしている王愛延先生の「薬局でできる妊婦サポートと漢方調整」を受講しました。
生殖専門医の朱先生から学んだこと
生殖遺伝と着床前診断
遺伝学とは本来、「継承」と「多様性」を扱う学問です。
日本では「遺伝」という言葉に暗いイメージを持たれることもありますが、本来は親から子へ受け継がれる生命の仕組みを学ぶ学問です。
産婦人科における遺伝医療は、
・腫瘍領域
・周産期領域
・生殖医療領域
など幅広い分野に関わっています。
特に生殖医療では、体外受精(ART)や顕微授精(ICSI)、着床前診断などとの関係が深くなっています。
不妊治療、出生前診断、遺伝医療は、以前はそれぞれ独立した分野として扱われていましたが、現在では相互に関連しながら発展しています。
染色体異常について
カップルのいずれかに染色体異常が認められる頻度は一般集団で約0.84~0.92%とされています。
不妊治療を受ける方では
男性 0.595%
女性 0.64%
との報告が紹介されました。
さらに、
無精子症 10~15%
高度乏精子症 5~7%
に染色体異常が認められるとされています。
また、ART(体外受精)による先天異常や染色体異常のリスクについては多くの研究が行われていますが、近年では大きな増加は認められないとする報告が増えているとのことでした。
先天性疾患全体の発生率は約3~5%とされています。
染色体異常と出生前診断
代表的な染色体異常として
・21トリソミー(ダウン症候群)
・18トリソミー
・13トリソミー
があります。
トリソミーの発生率は母体年齢とともに上昇することが知られています。
21トリソミーでは、
20歳 約0.06%
40歳 約1.19%
という数字も紹介されました。
非侵襲的出生前遺伝学的検査(NIPT)
NIPTは妊娠10週頃以降から受けることができる検査です。
主に
・13トリソミー
・18トリソミー
・21トリソミー
などを対象としています。
近年では検査技術の進歩により、多くの妊婦さんが情報に触れる機会が増えていますが、検査を受けるかどうかは十分な遺伝カウンセリングのもとで判断することの重要性も説明されました。
Y染色体微小欠失(AZF)
男性不妊の分野では、Y染色体微小欠失(AZF)についても学びました。
精子形成に関する重要なゲノム領域は、Y染色体長腕(Yq)に存在するAZF(Azoospermia Factor)領域にあります。
この領域に欠失があると造精機能障害との関連が知られており、無精子症や高度乏精子症の原因のひとつになることがあります。
男性不妊の原因検索において重要な検査のひとつであることを学びました。
着床前遺伝学的検査(PGT)
着床前遺伝学的検査には
・PGT-A
・PGT-SR
・PGT-M
があります。
PGT-A
PGT-Aは胚の染色体数を調べる検査です。
日本産科婦人科学会のCQ37では、
「着床前胚染色体異数性検査は妊娠率や出生率改善に有効か」
というテーマで議論されています。
対象としては、
・体外受精で複数回妊娠に至らなかった方
・流産を繰り返す不育症カップル
などが挙げられます。
近年では高年齢妊娠との関連も含めて議論が進んでいます。
PGT-Aの問題点
一方で、
・胚盤胞生検
・モザイク胚の取り扱い
などの課題もあります。
モザイク胚については近年、妊娠・出産に至る症例も報告されており、その評価や取り扱いについて議論が続いています。
PGT-SR
染色体構造異常を対象とした検査です。
均衡型転座や逆位などが関係するケースで行われます。
PGT-M
単一遺伝子疾患を対象とした検査です。
重篤な遺伝性疾患を持つ家系などで適応が検討されます。
薬剤師の私には難しい内容もありましたが、不妊治療を受けている方のサポートには欠かせない知識だと感じました。
特に近年は、不妊治療、出生前診断、遺伝医療が相互に関連する時代になっており、相談を受ける立場としても継続的な学びの必要性を感じました。
漢方と生殖医療
講義の最後には漢方についても触れられました。
漢方は生殖医療を直接代替するものではありませんが、
・卵巣機能を支える体づくり
・精子形成を支える体調管理
・睡眠や冷えの改善
・ストレス緩和
などを目的として活用されることがあります。
中医学では「心身一如」という考え方があり、心と体は切り離せないものとして考えます。
不妊治療中はどうしてもストレスが大きくなりやすいため、心身両面からサポートする視点の重要性を改めて感じました。
また、採卵期と移植期では目的が異なるため、治療のステージに応じて漢方薬を使い分ける考え方も紹介されました。
今回の講義を通じて、生殖遺伝や着床前診断は非常に専門的な分野でありながら、現在の不妊治療とは切り離せないテーマになっていることを改めて感じました。
高度生殖医療が進歩する一方で、
生活習慣の見直し
十分な睡眠
ストレスケア
体質改善
といった基本的な取り組みも依然として重要です。
今後も最新の生殖医療の知識と中医学の知識の両方を学びながら、山形の地で妊活中の皆様のお役に立てるよう努力していきたいと思います。

講演後に朱先生と記念撮影。生殖遺伝や着床前診断について大変勉強になりました。
前回の不妊カウンセリング学会の学術集会「おとこの気持ち」関連のコラムはこちらです。
















